防犯カメラ映像などからセチトレコ選手が新幹線で名古屋駅に到着した時、岐阜県在住のウガンダ人男性が出迎え、合流していたことが判明した。大阪府警が出迎えたウガンダ人男性に行方を尋ねると、「四日市のある人のところに行った」と語ったという。

 その場所に大阪府警と三重県警の警察官が駆け付けたところ、セチトレコ選手がいたという。

「警察官が行った時、セチトレコ選手は特に何をしているということもなかった。確認すると、すぐ本人だと認めた。IDカードも所持しており、確認もできた。亡命、難民申請などという政治的背景がないこと、犯罪につながるようなことも見当たらないので、事件性はない。仕事をしていた様子もない。ただ、警察官が心配して、みんなが探していたと話すと涙を浮かべていたそうだ」(前出の捜査関係者)

 セチトレコ選手は20日に四日市市を離れて、東京に移動。ウガンダ大使館はセチトレコ選手を21日にも帰国させると発表した。前出の組織委員会幹部はこう言う。

「セチトレコ選手の無事が確認されたと聞いて『よかった』と思わず、近くにいたスタッフと喜びましたよ。発見後のPCR検査も陰性だったそうです。彼が入国したビザは東京五輪参加のための日本滞在の許可です。もちろん、働くことはできません。しかし、スポーツの国際大会で不法滞在でも働きたいと姿を消す人がいるのは、決して珍しいことではない。想定内でした」

 オーストラリアで18年に開催された、コモンウェルスゲームズ(英連邦競技大会)でもウガンダ人選手の失踪が報じられた。日本では1994年の広島アジア大会で、イラン、ネパール、パキスタン、スリランカ、バングラデシュの選手13人が大会期間中に選手村などから姿を消すという事件が起こり、大きなニュースになった。当時の日本はバブル崩壊直後で、入国にはハードルの高いビザ取得が必要だったことも失踪の背景にあった。

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不法就労が目的で入国も