「仕事と大学院の両立は決して楽なことではありません。時間的にも体力的にもかなり厳しいことを覚悟してください。もし仕事に手を抜いたら、会社をさぼって勉強しに行くのかと言われてしまいます。転職する準備かと見られることも。なぜ大学院に行きたいかを上司や同僚に説明し了解を得て、周囲から応援してもらえるぐらいの環境をつくるのが望ましいでしょう」

 学部から大学院への進学は、それまで学んできた分野でゼミ授業の担当教員の勧めなどをもとに専攻を決めることが多い。

 一方、社会人は資格が取得できる専門分野をめざす場合が多い。経営に必要な知識や手法を身につけてMBA(経営管理学修士)が取得できるビジネススクール、司法試験をめざす法科大学院を始め、税理士や会計士になるためのアカウンティングスクール、臨床心理士の資格取得につながる大学院に人気がある。

 理系では、AIやIoTなどに通じた人材を育成するICT(情報通信技術)系や、エンジニアのMBAとも言われるMOT(技術経営)を研究する大学院が注目されている。

「社会人の場合、今の仕事上の課題を解決するためか、それとも新しいフィールドを求めるかによって専攻分野が決まるでしょう。ただジョブローテーションで1年後に違う部署に移ってしまい、せっかく学んだことが役に立たなくなったという話も聞きます。会社の人事制度などを事前に見極めることも大切です」

 なかには就職して何年か経つうちに、自分が本当にやりたかったことをきちんと学び直したくなったという動機で大学院をめざす人もいるだろう。

「特に30代から40代の就職氷河期世代は、不本意ながら今の会社に就職した人もいます。すると学生時代に興味があったことをあきらめきれずに学び直したくなるかもしれません。ただ仕事上のキャリア形成にはつながりにくいので、先々まで仕事と両立できるかをよく考えておく必要があります」

 専攻分野が決まると、次は志望校選びだ。数多くの大学院があるなかから、どのようにして自分に合った学びの場を見つけるのか。

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