逆に小池知事の政治的な存在感は高まった。

「最終日に都民ファの候補者の応援に入る大勝負にでた。下馬評通り大敗していたら、政治力は失墜したが、勝ったということですね。菅首相も今後は小池さんの政治力を無下にできないでしょう」

 菅首相は東京五輪・パラリンピック開催や新型コロナウイルス対応について、世論調査や都議選の議席予測の数字を常に参考にしながら決めてきたという。

「公明党と足せば、過半数は軽くクリアできると思っていたのに…。都議選で大勝し、東京五輪・パラリンピックを成功させて、解散総選挙につなげたいというのが本音だった。風向きが変わったのは、小池さんが退院し、リモートで公務に戻った7月1日から。急に都民ファが勢いづき、2日に小池さんが記者会見し、『東京五輪は無観客を軸に』と言い、明らかに風が吹き始めた。それでも大丈夫だろうと思っていたが、最終日は小池旋風に飲まれてしまった」(自民党東京都連幹部)

 象徴的だったのは定数1を4人で争った千代田区だ。都民ファの平慶翔(けいしょう)氏が、かつて「自民党都議会のドン」と呼ばれた内田茂氏の娘婿の直之氏を破り、2度目の当選を果たした。自民党は17年の区長選と都議選、今年1月の区長選に続き、都民ファに4連敗となった。前出の都連幹部はこうぼやく。

「菅首相は東京五輪の開幕を目前に控えているのに、有観客、無観客などの策を小出しにし、世論の反応を見ていた。ワクチン接種にしても職場接種や自治体の大規模接種を散々、煽っておきながら7月になって急に数が足らなくなったとストップをかけた。こうした場当たり的な対応に国民の不信感が募っていたように思う。コロナと五輪対応が勝敗のカギだった」

 衆議院の任期は今年10月までで解散総選挙は目前だ。だが、菅首相は4月の衆参補選・再選挙で3連敗、千葉県知事選挙、静岡県知事選挙でも敗北している。「選挙の顔」として不安視する声が党内で相次いでいる。

衆院選となれば、立憲民主党や共産党など野党だけではなく、吉村洋文大阪府知事が率いる日本維新の会も含めた厳しい選挙戦になる。都議選で20近く議席を落とした菅首相では負け戦となると衆院議員から厳しい声が出ている。安倍前首相と違って菅首相は選挙に弱い。菅首相で解散総選挙が戦えないとなれば、これからは完全に政局になる。河野太郎ワクチン担当相、岸田文雄元外相、小泉進次郎環境相、野田聖子幹事長代行らがポスト菅の有力候補だろう。だが、ダークフォースとして小池待望論が党内で巻き起こる可能性もある」(前出の自民党幹部)

 政界の一寸先は闇のようだ。

(AERAdot.取材班/今西憲之)