パ・リーグでは金子誠(日本ハム)の印象が強い。常総学院では大型内野手として注目を集めていたが、特に評価が高かったのは守備である。プロ入り3年目の1996年には新人王に輝いているが打率は.261とそこまで高くなく、堅実な守備と犠打の多さが評価されてのものだった。その後も打率は2割5分前後というシーズンが多かったが、年々右打ちの上手さに凄みが増し、プロ入り16年目の2009年に自身初となる打率3割(.304)をマーク。ホームランもキャリアハイとなる14本を放っている。惜しくも2000本安打には届かなかったが、実働20年で1627安打は見事な数字と言えるだろう。

 守備というよりも足のスペシャリストから打撃を磨いた例が福地寿樹(元ヤクルトなど)だ。高い運動能力が評価されて1993年のドラフト4位で広島に入団。ウエスタンリーグでは2年目から4年連続で盗塁王に輝いている。しかし打撃の弱さからなかなか一軍に定着できず、主に代走と守備固めというのが与えられた役割だった。転機となったのはトレードである。2006年に青木勇人との交換で西武に移籍すると、いきなりキャリアハイとなる85安打を放つ。2008年にはFAで西武入りした石井一久の人的補償でヤクルトに移籍すると、初の規定打席に到達してリーグ6位となる打率.320をマークし、42盗塁で盗塁王に輝くなどプロ入り15年目にして大ブレークを果たしたのだ。レギュラーを張ったのはこの年と翌年だけだったが、広島時代の12年間で80安打しか放つことができなかった選手が、ここまで一気にブレークするとは誰も予想しなかったことだろう。

 現役の選手では甲斐拓也(ソフトバンク)が守備の人から年々打撃もレベルアップしている。レギュラーをつかんだ2017年から2年間の打率は2割台前半。2018年の日本シリーズでは6連続で盗塁を阻止するなど広島の機動力を完全に封じ込めてMVPに輝いているが、このシリーズでの打撃成績は2安打、打率.143というものだった。

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甲斐は打撃でも今後一流に?