現役時代のヤクルト・宮本慎也 (c)朝日新聞社
現役時代のヤクルト・宮本慎也 (c)朝日新聞社

 プロ野球の世界では入団した時の期待とは違うタイプの選手になるケースも多い。堂上直倫(中日)はその典型例で、スラッガーとして注目されて3球団競合でプロ入りしたものの、内野のユーティリティプレーヤーとして貴重な戦力となっている。そして堂上とは逆に守備や走塁が評価されて指名されながら、プロで大きく打撃を伸ばした選手も確かに存在している。今回はそんな守備の人として指名されながらも、期待以上の打者へと大出世を果たした選手をピックアップしてみたいと思う。

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 まず何といっても代表例は宮本慎也(元ヤクルト)になるだろう。PL学園では2年夏に背番号14でベンチ入りを果たし、決勝戦では怪我の深瀬猛にかわってサードでスタメン出場。チームの甲子園春夏連覇に貢献している。同志社大、プリンスホテルでもショートのレギュラーとして活躍し、逆指名のドラフト2位でヤクルトに入団した。高い順位でのプロ入りだったが、評価されていたのは守備でプロ入り当時は野村克也監督から守りだけの選手という意味で『自衛隊』とも言われていた。それでもミート力と小技に磨きをかけ続けて、プロ入り6年目には初の打率3割をマーク。その後もヒットを重ねて通算2133安打を記録するまでになった。ショートのイメージが強いが、キャリアの後半はサードとしても活躍しており、唯一のベストナインは三塁手部門で受賞している(2011年)。

 宮本ともにヤクルトの黄金時代を築いた古田敦也も強打の捕手のイメージが強いかもしれないが、プロ入り当時の打者としての評価は決して高いものではなかった。野村監督も評価したのはその肩であり、1年目は打撃には目をつむって起用したと話している。そんな古田だったが2年目には早くも首位打者を獲得。引退までに通算8度もの打率3割をマークしている。相手バッテリーの配球を読み切って内角は思い切り引っ張り、外の変化球は右方向へ弾き返すなど広角に打ち返す技術は見事だった。捕手という負担が大きいポジションでありながら、プロ入り後にここまで早く打力が向上した例はなかなかないだろう。

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西尾典文

西尾典文

西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から専門誌に寄稿を開始。修了後も主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間400試合以上を現場で取材し、AERA dot.、デイリー新潮、FRIDAYデジタル、スポーツナビ、BASEBALL KING、THE DIGEST、REAL SPORTSなどに記事を寄稿中。2017年からはスカイAのドラフト中継でも解説を務めている。ドラフト情報を発信する「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも毎日記事を配信中。

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