「ある時、立憲民主党の枝野幸男代表のポスターが貼ってあることに菅原氏が気づいた。『夜、あのポスターを破ってこい』『菅原一秀と赤文字で車にあるが、それは何かで隠せ』『車は遠くに止めて、歩いて行け』『代わりに俺のポスターを貼ってこい』などと細かく指示してきました。嫌なので行ったふりをしていたら『まだ枝野のポスターがあるじゃないか』と厳しく叱られた。仕方なく、夜闇にまぎれてはがしたことがありました。枝野さんには本当に申し訳ないです。菅原氏には法を守るという意識はありません」(Aさん)

 菅原氏は辞職後、SNSで事件についてこう謝罪した。

「私の政治活動において一部公職選挙法に触れる部分があり、当局の事情聴取に多くの時間を使って丁寧に説明してまいりました」「今後のことは一切白紙です」

 検察審査会の申立人代理の郷原信郎弁護士はこう語る。

「河井克行夫妻の事件と同様、これだけハッキリ証拠があるのに一度は、不起訴にした。検察はその理由を『大臣を辞職して反省』というが、そんなことでクロをシロにし、検察審査会から起訴相当を突き付けられ、あわてて捜査というのはお粗末すぎる。起訴に追い込んだのは、勇気ある菅原氏の元秘書たちだった。自らの経験を踏まえて、客観的なデータをそろえて、検察に証言したからこそ、事件化できた。また、立件金額80万円としているが、より丁寧に詰めて捜査すれば数百万円になった可能性もあるので、略式起訴には違和感が残る」

 菅原氏の略式起訴の一報にAさんはこう語る。

「経産相の辞職を余儀なくされ、しばらく病気、体調不良と言いながら、国会を欠席していた。実際は事務所に来て、戸別訪問までしていた。菅原本人の指示なのに秘書に責任を押し付け、反省なんてゼロですよ。菅原氏を見ていると、香典や地域のイベントでカネがばらまける資金があったからこそ、当選してきたと感じます。私は数々の違法行為を押し付けられた。こういう人物は二度と国会議員になってはいけない」

(AERAdot.編集部 今西憲之)

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今西憲之

今西憲之

大阪府生まれのジャーナリスト。大阪を拠点に週刊誌や月刊誌の取材を手がける。「週刊朝日」記者歴は30年以上。政治、社会などを中心にジャンルを問わず広くニュースを発信する。

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