2000個あると言われている吸盤を指のように器用に使ったり、中でも驚いたのは、タコが二足歩行する瞬間をとらえている。

 まず、タコと海の生き物の生態ものとして、めちゃくちゃおもしろい。子供心と知的好奇心を刺激してくれる。そして映像がとても綺麗。

 物語のポイントとなってくるのが、タコの寿命は約一年なのだということ(タコによって違うのかもだけど)。これでフラグがたちますよね。

 フォスターさんと「彼女」の一年の物語なのです。最初は友情だと思って見ているけど、毎日海に潜り彼女を追いかけるフォスターさんの姿はもはやストーカーに見えてしまう瞬間も僕にはあったり。

 物語の大きな軸として、タコを狙うサメとの物語もあります。タコとサメの戦いをカメラがしっかりとらえている。フォスターさんとしてはタコを助けたいけど、自然のルールを壊してはいけないと、手は出さない。サメに追いかけられるタコ。タコは岩の中に隠れる。だが、サメがそのタコを見つけて……。

 なんてシーン。まるでファインディングニモ的なピクサー映画のようなシーンが何度も出てくる。ドキュメンタリーですからね。

 そして最後は……。出会いもあれば別れもある。

 最後まで見て、本当にいいものを見たと心から思いました。何か一つを徹底的に好きになり追及する。だからこそ作り上げるものがあって、その気持ちに深く感動します。

 ぜひ見てほしいです。

鈴木おさむ(すずき・おさむ)/放送作家。1972年生まれ。19歳で放送作家デビュー。映画・ドラマの脚本、エッセイや小説の執筆、ラジオパーソナリティー、舞台の作・演出など多岐にわたり活躍。パパ目線の育児記録「ママにはなれないパパ」(マガジンハウス)が好評発売中。バブル期入社の50代の部長の悲哀を描く16コマ漫画「ティラノ部長」の原作を担当し、毎週金曜に自身のインスタグラムで公開中。YOASOBI「ハルカ」の原作「月王子」を書籍化したイラスト小説「ハルカと月の王子様」が好評発売中

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鈴木おさむ

鈴木おさむ

鈴木おさむ(すずき・おさむ)/放送作家。1972年生まれ。19歳で放送作家デビュー。映画・ドラマの脚本、エッセイや小説の執筆、ラジオパーソナリティー、舞台の作・演出など多岐にわたり活躍。

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