同院にも感染制御チームはあるが、脳疾患の手術をする病院という性質上、院内感染予防を徹底するために置かれたチームで、コロナについての対応はしていないという。

 現在は、問診とPCR検査は実施し、コロナ陰性が確定した患者のみに手術をはじめとする治療対応をしている。コロナ陽性が判明した患者については、即座に対応できる病院へ送っているという。

 20年の脳動脈瘤治療数は減少した、と富永医師は話す。
 
「第1波、第2波では手術症例がグッと減りました。これは当院が延期できる手術は延期したという要因と、患者さんが受診控えしたという要因の二つがあります。20年は約300例ですが、21年は100例程度になるでしょうか。現在は少しずつ増えていますが、なかなか状況が好転していかないので、今後も患者さんが受診控えをすることもあるでしょう」

 富永医師が一番懸念すると語るのは、このコロナ禍で来院できない、または受診を控えたために病状を進行させている人が増えることだ。

「手術が待てる症例であったとしても、早めに治療できるのとできないのでは、予後が大きく変わってしまいます。亡くなるまでにはいかずとも、病状を悪化させてしまっている人がいることが心配です」
 
 コロナ禍の収束は見えないが、落ち着いた状況になったころには、同院に他の病院では対応が難しいような難症例が紹介されてくることを富永医師は覚悟しているという。

 脳動脈瘤治療については、週刊朝日ムック『手術数でわかるいい病院2021』で、全国の病院に対して独自に調査をおこない、手術数の多い病院をランキングにして掲載している。ランキングの一部は特設サイト「手術数でわかるいい病院」で無料公開しているので参考にしてほしい。https://dot.asahi.com/goodhospital/

(文/伊波達也)