宇都宮氏は、この署名活動について、IOCのバッハ会長が来日予定の17日までに第一次の集約を行いたいとしている。

 東京五輪開催を巡っては、国内では聖火ランナーを辞退する著名人が相次ぎ、都内では「医療は限界 五輪やめて! もうカンベン オリンピックむり!」と窓に貼り紙を掲げた病院もあった。海外のメディアやアスリートからも開催を疑問視する声や、延期を望む意見が出ている。

 都内の病院で働く50代の男性医師は、「SNSに詳しくないので署名をするつもりはない」としつつも、「コロナ対応で疲れ切っている我々の思いを代弁してくれていると思います。コロナの前は五輪を楽しみにしてましたが、五輪強行によってまさかの事態が起きた場合、医療側が対応しきれるか分かりません。今の時点で、もう無理だという医療機関がたくさんありますから」

 都内の訪問看護ステーションで働く50代の女性看護師も、「もし開催したとしても、恐怖に近い不安を抱えながら五輪を見守ることになるのではないでしょうか。少なくとも医療関係者はそうなると思います」と本音を漏らす。

 こうした国民の声をどう受け止めるのか。政府や都、組織委は難しい判断を迫られている。

(AERA dot.編集部・國府田英之)

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國府田英之

國府田英之

1976年生まれ。全国紙の記者を経て2010年からフリーランスに。週刊誌記者やポータルサイトのニュースデスクなどを転々とする。家族の介護で離職し、しばらく無職で過ごしたのち20年秋からAERAdot.記者に。テーマは「社会」。どんなできごとも社会です。

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