■子宮全摘出術は基本的に開腹で

 そのほか、CIN3に対する治療として、「光線力学療法」と「レーザー蒸散術」が挙げられる。

 光線力学療法は、レザフィリンという薬剤を血管に注射する方法だ。レザフィリンはがん細胞に集まりやすく、一定の周波数の光を浴びると、がん細胞を壊す力をもつ。現在は治験の段階で、実施している病院は少ない。レーザー蒸散術はレーザーを照射して、がん細胞を蒸散させる。

 いずれもがん細胞を破壊・蒸散させることから、すべての病変を採取できないため、くわしい組織診断がおこなえず、病期の確定が不可能で、現状では標準的な治療とはいえない。円錐切除術を回避したい場合には、適応をしっかり見極める必要がある。

 子宮全摘出術は基本的に開腹でおこなわれ、切除範囲によって、主に四つの術式がある。

▼単純子宮全摘出術=IA1期に適応
 子宮を支える基靱帯という支持組織などを残し、子宮(体部・頸部)を切除する。入院は約1週間。

▼準広汎子宮全摘出術=脈管侵襲があるIA1期、IA2期(浸潤が3ミリを超え、5ミリ以下)に適応
 子宮、基靱帯や腟の一部を切除する。単純子宮全摘出術と、広汎子宮全摘出術の中間的な位置づけとなる。

▼広汎子宮全摘出術=IB期(IA期を超えるが子宮頸部に限られる)~IIB期に適応
 子宮、卵巣、卵管、基靱帯、腟の一部、骨盤内のリンパ節を切除(リンパ節郭清)する。切除範囲は子宮全摘出術のなかで最も大きくなる。

 手術では排尿にかかわる神経を傷つけることが多いため術後の合併症として、尿が出にくい、尿漏れなどの排尿障害が表れやすい。完全に回復するまで数カ月かかることもあり、個人差が大きい。

 そのほか、リンパ節郭清に伴い、リンパ浮腫(足のむくみ)が10~20%に表れる。閉経前の患者で卵巣を切除した場合には、のぼせ、ほてりなどの更年期障害のような症状がみられる。慶応義塾大学病院婦人科診療科部長の青木大輔医師は次のように話す。

「合併症について患者さんには術前に説明しますが、出現頻度や程度を予測することは難しく、いずれもQOL(生活の質)を下げるため、ご本人にとって深刻です。遠慮せずに主治医に話して、症状の軽減を図ってください」

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