■妊娠・出産を望む場合の手術

 四つ目の術式として、IB1期までで妊娠・出産を望む場合に考慮される「広汎子宮頸部摘出術」がある。子宮体部と卵巣を残し、妊孕性(妊娠・出産できる機能)を温存する術式だ。術後は不妊、流産、早産などのリスクが高くなるため、生殖医療や周産期医療などの総合的な治療ができる病院を選ぶことが肝要だが、実施している病院は多くない。

 なお、子宮頸がん手術では、2018年に腹腔鏡による手術が保険適用になった。がんの大きさが2センチまでが適応の目安とされている。開腹手術に比べて傷も小さく出血も少ないため、からだへの負担は少ない。しかし、骨盤内の再発率や術後の生存期間が開腹術に劣るという試験結果が、同年、アメリカから発表された。それを受けて、日本でも完全な標準的な治療にはなっておらず、日本産科婦人科学会の腹腔鏡下広汎子宮全摘出術登録施設でのみ実施されている。

 県立静岡がんセンター婦人科部長の平嶋泰之医師はこう話す。

「現在、臨床試験の形で日本独自の調査を継続中です。腹腔鏡手術の実施については各病院で考え方が異なりますので、希望する場合は、主治医に相談してみてください」

(文・別所文)

※週刊朝日2021年5月7・14日号より