もともと武司さんは、仕事には真面目で真摯に取り組む人だった。結婚しているときは、珠子さんのビジネスに乗っかっているという引け目と甘えとで、本来のよさが隠れてしまっていた。離れたことで再び、武司さんの魅力が輝き始めた。

「仕事への姿勢が変わったことで、どんどんビジネスがまわるようになったみたい。いまでは、私以上に稼いでいるんじゃないかな? 真剣に仕事に取り組んでいる彼を、いまはとても尊敬しています」

 仕事やお金は、人生でとても重要なファクターだろう。夫婦であれば共有財産となる部分もあるから、なおさらだ。しかし、家庭の環境が変わったとき、仕事とお金をどう考えるかは、パートナーの「生き方」に直結してくる。そこで露呈した相手の姿が、自分の価値観と決定的に違うとなれば、人生を共に歩んでいくのは難しいのかもしれない。珠子さんと武司さんはそうしたケースだったように思える。

 ただ、離婚後も関係が破綻することなく、子どもの共同養育も実践できているのは、お互いに尊敬できる部分を残したまま別れられたからだろう。もし離婚が泥沼化していれば、今のような良好な関係は築けていないかもしれない。

 離婚後の子どもの養育、という視点からも2人の証言には学ぶべきところがあるように思える。

 同じ夫婦生活を武司さんからはどう見えていたのか。【夫編】では夫の視点で振り返っている。

(取材・文=上條まゆみ)