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新型コロナウイルス対策として政府が首都圏の一都三県に発令した緊急事態宣言は、8日から再延長期間に入った。ただ、事態が収束するかは見通せておらず、再々延長の可能性も取り沙汰されている。時短を守ってきた飲食店にも、通常営業再開を検討したり、閉店時刻を遅くしたりと、自粛を「緩める」動きが出始めている。
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8日夜、東京・新宿区の小さな居酒屋。午後7時直前に、常連らしき中年の男女が店に入って行った。
この店は、今月7日までは時短要請に従い午後7時ですべてのラストオーダーを取り終え、8時で閉店していた。だが、再延長期間に入ったこの日からは、客からの要望があれば午後8時ごろまでは酒類の注文を受け付けるように“ルール”を緩めた。
常連客の「まだゆっくり飲めないのか」という嘆きの声や、再延長の発表後、今週末の予約が相次ぎキャンセルとなったことを受けて決断したという。
40代の男性店員はこう話す。
「コロナの前も、閉店時刻にきっちり終わるのではなく、お客さんの様子を見ながら、という形でやってきました。何時だからもう頼んじゃダメ、店にいちゃダメなんてことをずっと続けていたら、うちみたいな店はお客さんが離れてつぶれてしまいます」
午後7時以降の入店は断り、9時前には店を閉める。感染予防のため、客には大きな声での会話を控えるなどのお願いをしているという。
千葉県湾岸部の繁華街にある、30人ほどを収容できる居酒屋の男性店主は、再々延長になった場合、すぐに通常営業に戻す方向で検討を始めている。
男性店主を焦らせるのは、協力金だけでは限界という店の台所事情だけではない。同じ繁華街にあり、午後7時以降も酒類を含むメニューの提供を続けている「ライバル居酒屋」の存在だ。
その店は連日、満席状態が続き、金曜の午後7時以降には空席待ちの客が並ぶほどの盛況ぶりとなっている。
「うちはサラリーマンのお客さんが多いけど、しばらくは向こうで飲むわ、と言ったきり顔を見せなくなった方がいます。仕事の後にせっかく来たのに、注文がすぐに終わっちゃう居酒屋なんて、つまらないと思われるのは当たり前だよね。協力金では限界だということもあるけど、経営が苦しい中で、だいじなお客さんを別の店に取られるんじゃないか、いつか通常営業ができるようになっても戻ってきてくれないんじゃないか、客商売だからそういう不安はとてもあります」