仕事と両立する研究生活は大変だが、「仕事が気分転換になるときもあります」(写真/小野田尚武)
仕事と両立する研究生活は大変だが、「仕事が気分転換になるときもあります」(写真/小野田尚武)
「芸能人だから中退したと教授たちをがっかりさせたくないので、大学に入れたら絶対に卒業すると決めていました」(写真/小野田尚武)
「芸能人だから中退したと教授たちをがっかりさせたくないので、大学に入れたら絶対に卒業すると決めていました」(写真/小野田尚武)

 45歳で早稲田大学に入学。現在は博士課程で「老化学」の研究を続け、企業と共同で介護予防ロボットの開発にも取り組む、女優のいとうまい子さん。『早稲田理工 by AERA 2021』のインタビューで、56歳の今もなお、学び続ける理由を聞いた。

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 私は高校卒業と同時に芸能界に入り、たくさんの方たちに支えられて仕事を続けてきました。デビューから10年20年と時が経つにつれ、お世話になった方たちに恩返しがしたい、社会の役に立ちたいと考えるようになったんですね。ただ、恩返しをしようにも、自分の知識も経験も少なすぎて、何をしたらいいのかわからないままでした。

 そんなときある仕事がきっかけで、「予防医学」に関心を持ちました。今後高齢化が進み、医療財政が厳しくなる中で、病にかかってから治療するのではなく病にかかりにくい体をつくり健康を維持する予防医学は、重要になっていくはず。その知識を身につければ、恩返しにつなげられるかもしれない。受け売りの知識ではなく、きちんと勉強してみたかった――というのが、大学を志した大きな理由です。大学以外でも学ぶことはできますが、今まで経験したことのない「大学」への憧れもありました。

 ただ、仕事を続けながら毎日通学することはできません。いろいろ調べたところ、早稲田大学人間科学部のeスクール(通信教育課程)に予防医学を扱う健康福祉科学科があると知り、背中を押されたような気がしました。

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 初めて経験する大学の勉強はすごく楽しかった。医療資格を持つ教員から実践的な話を聞く機会もあり、視野が広がりました。なじみのない分野の授業もありましたが、振り返ってみると無駄なものはなかったですね。統計学もその一つで、いま大学院で老化学の研究をする中で、統計の大切さを実感しています。

 eスクールは、毎週日曜日の午後11時59分までに課題のレポートを提出しなければ欠席扱いになってしまうため、想像以上にきつかったです。ロケ先にパソコンを持ち込んで授業を受け、レポートを仕上げたこともありました。

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