元ヤクザの殺人犯役の役所広司がコケるシーンにほれぼれした本当の理由 鈴木おさむ (1/2) 〈dot.〉|AERA dot. (アエラドット)

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元ヤクザの殺人犯役の役所広司がコケるシーンにほれぼれした本当の理由 鈴木おさむ

連載「1970年生まれの団ジュニたちへ」

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放送作家の鈴木おさむさん

放送作家の鈴木おさむさん

 放送作家・鈴木おさむさんが、今を生きる同世代の方々におくる連載『1970年代生まれの団ジュニたちへ』。今回は、映画「すばらしき世界」について。

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 西川美和監督の映画「すばらしき世界」。役所広司さん演じる主人公は元ヤクザの殺人犯。刑務所での刑期を終えて社会に復帰する。元ヤクザであることの生きにくさを描いた映画としては、藤井道人監督「ヤクザと家族 The Family」と、偶然にもテーマが被るところがある。「ヤクザと家族」もとても素晴らしい映画でしたが、描かれている「生きにくさ」がまた違う。

 西川美和さんの作品はどれも好きでしたが、今回のこの作品、僕の中では今のところ一番好きかもしれません。

 とにかく西川監督と役所広司さんのハーモニーがたまらない。元ヤクザの生きにくさを時にはコミカルにも感じるお芝居で演じているのですが、僕が一番ほれぼれしたのは、ゴミでコケるシーン。

 いきなりアパートの前で、ゴミでコケて転ぶんですが、コケるってめちゃくちゃ難しいんです。よくビートたけしさんが、ステージでコケてみせますが、あれやってみてください。コケるってとても難しいんです。無意識にどこか体を守っちゃう自分がいる。

 だから、映画やドラマの中で人がコケるシーンってどうもリアリティーがない。ですが、この映画の役所さん、思いっきりコケる。しかも後頭部から。本当にコケている。簡単に見えるほど危険。だけど、そのコケを見せられたことにより、主人公がとてもみじめに見える。

 そんなところから改めて役所広司さん、すごいなと思うのです。そして、なんとか社会に復帰していこうとするのですが。西川監督の映画って、いつも、幸せなシーンが前フリに見えてしまう。せっかく出来た幸せが、一瞬で壊れてしまいそうなはかなさがある。

 今回もまさにそうで、社会にようやく居場所を見つけられたかもしれない主人公の幸せが、壊れそうで、見ていてドキドキするし、心臓をずっと掴まれているような気がする。

 あの緊張感がしんどいんだけど、たまらないのです。


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