「私の長い野球人生で、ヤクルトスワローズには足を向けて寝られません。ヤクルトのユニフォームを着て日本一に3回、リーグ優勝4回させていただきました。これほど名誉なことはありません」

 野村氏の言葉に、あらためて「ヤクルト愛」を感じ取った者は多かったはずだ。それから半年余りが過ぎた2020年2月、野村氏は永眠。ヤクルトをはじめ阪神楽天でも同じユニフォームを着た愛息の野村克則氏(現楽天育成捕手コーチ)が父の死装束に選んだのは、背番号73のヤクルト時代のユニフォームだった。

『DREAM GAME』での「最下位なんてけしからん!」という野村氏の熱い言葉にも関わらず、ヤクルトは2019年に続いて昨年も最下位に沈んだ。小川前監督からバトンを受けて昨年から指揮を執っているのは、守護神として野村監督時代の3度の日本一ですべて胴上げ投手になった高津臣吾監督である。

「野村監督の教えを(春季キャンプ臨時コーチの)古田さんや僕がしっかり今の選手に伝えていき、大変だった90年代に(ヤクルトを)強くした野村監督のことを思いながら、2年連続最下位ですけども、しっかりと立て直していきたいなというふうに思います」

 高津監督はキャンプ中のインタビューでそう話しているが、ローマは1日にしてならず。簡単なことでないのは承知の上だが、「ノムラの教え」を受けてあの黄金期の立役者の1人にまでなった高津監督だからこそ、球団史上でも例のない3年連続最下位阻止はもちろん、本格的なチームの「立て直し」にも期待したい。(文・菊田康彦)

●プロフィール
菊田康彦
1966年生まれ。静岡県出身。大学卒業後、地方公務員、英会話講師などを経てフリーライターに転身。2004~08年『スカパーMLBライブ』、16~17年『スポナビライブMLB』出演。プロ野球は10年からヤクルトの取材を続けている。