糸井は188cm100kgという、日本人離れした身体を誇る。また大きいだけでなくオリックス時代の16年に53盗塁でタイトルを獲得するなど、スピードも併せ持つ。プロ入り後、日本ハムでの2年間は投手として二軍でのみの登板となった。野手転向で才能が開花し日本を代表する外野手となった経歴を持つ。

「他にもNPBには素晴らしい選手はたくさんいる。各チーム事情と合致すれば結果を残せるはず。ただしタイミングは本当に大事。菅野智之が巨人残留となったが、コロナ禍というのも大きく影響した。各球団、経営が苦しくて大盤振る舞いできない。今年同様、開幕延期も考えられる。そういう時期にたまたま米国挑戦と重なった。もっと言えば、アマチュアからストレートに巨人入りできていたら、MLB入りもスムーズに行ったかもしれない。でもこればかりは誰にもわからない」

 現在NPB最高の投手の一人でもある菅野は巨人への残留が決定。様々な事情が絡み合い、野球の実力だけでは思った通りに行かなかった。

 多くの日本人選手が結果を残し、MLBも随分身近に感じるようになった。しかし「運(=タイミング)も実力」ではないが、MLB入りして活躍することの難しさを改めて感じさせる。ただし大慈彌氏が語るように、メジャークラスの選手がNPBに多数いることも事実。次の挑戦者は誰になるかを念頭に置きながら、今年のプロ野球も楽しみたい。(文・山岡則夫)

●プロフィール
山岡則夫/1972年島根県出身。千葉大学卒業後、アパレル会社勤務などを経て01年にInnings,Co.を設立、雑誌『Ballpark Time!』を発刊。現在はBallparkレーベルとして様々な書籍、雑誌を企画、編集・製作するほか、多くの雑誌、書籍、ホームページ等に寄稿している。Ballpark Time!公式ページ、facebook(Ballpark Time)に取材日記を不定期更新中。現在の肩書きはスポーツスペクテイター。