「故障について、これまで以上に考慮されるようにもなった。少しでも身体面で不安がある場合は、リストから外れることも増えた。例えば楽天・岸孝之などは先発候補として考えている球団も多かった。素晴らしい制球力と大きなカーブなどは魅力的だったが、故障の心配があった。リスクを冒してまで獲得に乗り出す球団がなかったのではないかな」

 岸は06年オフのドラフト希望枠で西武に入団。1年目から4年連続2桁勝利を挙げた。特に08年日本シリーズでは12イニング連続奪三振のシリーズ新記録樹立など、2勝を挙げチームの日本一に貢献。MVPを獲得するなど、大舞台での勝負強さを発揮する。しかし故障で離脱することも多く、体調面で不安な要素はあった。米国では先発投手の登板間隔も短く、加えて移動も多いため、日本よりもタフさが求められる。そういう意味でも、MLB側が獲得を躊躇したとも考えられる。

「野手ではどうしても外野手中心だが、イチロー(マリナーズほか)、松井秀喜(ヤンキースほか)の印象が強過ぎる。その中で『挑戦したら面白かった』、と思えるのが柳田悠岐(ソフトバンク)。強く振れるので、どの打順でも打てた可能性がある。また俊足強肩であり外野ならどこでも任せられる。身体能力が大きな武器なので、体力が最高潮の20代のうちに見たかった」

 打撃ではパワーに加え確実性もあり、走力などのスピードも申し分ない柳田は、現在のNPBではずば抜けた存在だ。メジャー志向も強かったと言われており、米移籍は常に噂されていたが、国内FA権獲得前の19年オフにソフトバンクと7年の長期契約。事実上の生涯契約を結び、メジャーでのプレーは見ることはできなかった。

「糸井嘉男(阪神)も柳田と同じく、外国人に引けを取らないほどの身体能力がある。あれだけ大きな身体なのに、40歳を迎える今でも動けるのはすごい。プロ入り時に投手をやらずに野手1本でプレーし、早い段階で渡米していたらメジャー史に残る選手になれた可能性もあった。マイペースな性格も米国向きで多くの球団が注目していた。時代が許すならアマチュアから直接、米国行きでも面白かった」

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メジャーで活躍するには“運”も必要?