この話が中畑清監督の耳に入り、「チームの方針に従わない言動」と問題になった。

 8回の場面で、ベンチは梶谷に「自身の判断で盗塁しても良い」と指示していた。これに対し、中村の主張は「自分の打席では、場面によっては、走者を動かさず、打席に集中させてほしい」というもの。ベンチの決定事項への批判と取られても仕方がない。

 実は、中村は12年8月15日の阪神戦でも、自身の打席中に、ベンチの「フリーで走っていい」の指示で二盗を成功させた内村賢介を「なぜ盗塁するのか」と怒鳴りつけ、采配批判として2軍落ちしている。

 中畑監督としても、中村が2年前と同じ言動を繰り返した以上、前回より厳しい懲罰を与えざるを得なかった。「彼の力は必要なチームだし、彼の能力は十分わかっている。それでも、そういう言動をしたら、チームが機能していかなくなる」と無期限の2軍落ち処分にした。

 2軍でシーズンを終え、自由契約になった中村は、NPBでの現役続行を望んだが、他球団からのオファーはなく、「生涯現役」を宣言したまま、現在に至っている。(文・久保田龍雄)

●プロフィール
久保田龍雄/1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。最新刊は電子書籍プロ野球B級ニュース事件簿2020」(野球文明叢書)。

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久保田龍雄/1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。

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