写真はイメージです(Getty Images)
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厚生労働省「令和元年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」をもとに、石井さんが作成
厚生労働省「令和元年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」をもとに、石井さんが作成
「フリースペースたまりば」代表の西野博之さん(提供)
「フリースペースたまりば」代表の西野博之さん(提供)

 文部科学省の調査で過去最多を更新した「いじめの認知件数」。その件数の多さもさることならが、心配なのはいじめの低年齢化です。子どもたちに今、何が起きているのでしょうか。不登校新聞編集長の石井志昂さんが、その実態と背景を探ります。

【一目でわかるグラフ】こんなに増えてる!小学校のいじめ

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 最新の「いじめの認知件数」が発表されました(※)。文科省の調査によれば、2019年度に起きた小・中・高のいじめは61万2496件。前年度より6万8563件増で、1985年度の調査開始以来、過去最多を更新しました。単純計算ですが1分間に1件、いじめが起きています。

 2019年度のいじめ件数61万件2496件のうち、約8割は小学校で起きたいじめです。小学校のいじめ件数は48万4545件。過去5年間で3倍以上にも増えました。また、中学校で起きたいじめ件数と比較すると、その差がどんどん開いていることがわかります。

 なお、いじめの発生率も、小学校のほうが中学、高校よりも多いです。1000人当たりのいじめ発生率は、小学校が75.8件、中学校が32.8件、高校が5.4件。小学校が群を抜いてました。

 では、小学校ではどんないじめが起きているのか。下記のような話を私は聞いてきました。

「小学5年生で、ひどいいじめに遭いました。まわりの生徒は私のことを『くさい』と言って鼻をつまんで歩きました。また主犯格の子はストーカーのように、私のことを四六時中監視して、みんなで私の噂話をしていました」(15歳・女性)

「私が不登校になった理由は小学5年生のときに同じクラスの男子から受けた、いじめです。バイ菌扱いをされたり、給食のときに自分の机だけ離されたり……。言葉や態度によるいじめをずっと受けていました」(19歳・女性)

 どちらの場合も、四六時中、自分が責められているような気持ちになり、小学生のころから強い自己否定感や死にたいという気持ち(希死念慮)に苦しんだそうです。15歳の女性は、小学6年生の秋に「もう死にますので許してください」という気持ちでいっぱいになったと語り、19歳の女性は「私の心はどんどん壊れていった」とふり返っていました。

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石井志昂

石井志昂

石井志昂(いしい・しこう)/1982年、東京都町田市出身。中学校受験を機に学校生活があわなくなり、教員や校則、いじめなどを理由に中学2年生から不登校。同年、フリースクール「東京シューレ」へ入会。19歳からNPO法人全国不登校新聞社が発行する『不登校新聞』のスタッフとなり、2006年から編集長。これまで、不登校の子どもや若者、識者など400人以上に取材してきた

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福島から自主避難の小4児童へのいじめに担任は?