2人が受けたいじめの共通点は「先生や親からは見えなかった」ということです。小学生とはいえ、現在のいじめはとても巧みに隠されます。それを象徴する事件が2016年に起きました。

 2016年、東京電力福島第1原子力発電所事故で福島から新潟に自主避難した小学4年生の男子児童に対し、担任の40代教員が「菌」を付けて呼んだことが報道されました。

 報道によれば、男子児童は同級生から「近くを通るな」というそぶりをされたり、「〇〇菌」と呼ばれたりするなどのいじめを受けていました。男子児童はこれらのことを担任に相談し、担任も同級生に注意していました。しかし、担任が連絡帳を児童に渡す際に「はい、〇〇キンさん」と呼んだそうです。

 担任としては、ユーチューバーで有名になった「『ヒカキン』を名前の後に加えた愛称のつもりだった。ばい菌を指す意図はなかった」と説明しています。

 これは私の想像になりますが、おそらく児童に向けた蔑称と、ヒカキンのイントネーションが近かったのではないでしょう。また、公然と同級生たちが蔑称を読んでいるとも考えづらく、私も担任ならば児童のことを蔑称で呼ぶことはないでしょう。「ばい菌を指す意図はなかった」という担任の言葉が本当だとすれば、大人はいじめの深刻さに気づいていなかったということ。SOSをキャッチできない大人にも問題もありますが、結果としていじめが大人の目から隠されていたという事例ではないでしょうか。

こうした巧みないじめに加えて、現在はSNSでのいじめなどもあり、より一層、大人の目の届かない場所でいじめが起きています。

■いじめのピークは小学校2年生

 現在のいじめの特徴は「見えづらい」ことと「低年齢化」です。調査によればいじめがもっとも多い学年は小学校2年生。次いで小学校3年生、小学校1年生と続いており、小学校の低学年にいじめ件数の約半数が集中しています。

 小学校低学年のいじめとしては、下記のような話を聞いてきました。

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いじめている側の子どもの驚きの事情