きっかけは2014年の春節(旧正月)、テンセント(騰訊)が運営する「WeChat(微信)」というメッセージアプリが、ユーザー同士でお年玉を送り合える機能をリリースしたことだ。

「このお年玉機能の面白さは、グループチャットの中で、ゲーム感覚でお年玉を送り合えることでした。お年玉の『総額』と『何人がもらえるか』『金額は均等かランダムか』などを指定して、グループ内にお年玉を送れる機能を搭載したのです。たとえば、20人のグループチャット内で『20元を10人にランダムで配る』と設定してお年玉を出すと、早い者勝ちで、かつ人によって金額が異なるのでくじ引きの要素もある。それに誰かがお年玉を出したら、グループ内の別の人もお返しにお年玉を送りますから、盛り上がりますよね。実際、私も当時、同僚たちとのグループチャットでお年玉を送り合いました」(浦上さん)

 これを機に同社のモバイル決済サービス「WeChat Pay(微信支付)」の利用者が急増。
15年にはアリババグループの「アリペイ(支付宝)」も対抗してお年玉キャンペーンを展開し、中国のキャッシュレス化が一気に進んだ。現在ではほかのキャッシュレス決済サービスの多くもお年玉キャンペーンを展開しているという。

 一方で、親族間の“伝統的”なお年玉は、いまも現金が好まれると、浦上さんは話す。

「中国は、街なかでは現金が使えない店があるほどキャッシュレス化が進んでいますが、それでも祖父母などから子どもたちに渡すお年玉は現金が中心です。中国の春節は、帰省して親族で集まって過ごす習慣が日本以上に根強く、会えない親戚にまでわざわざお年玉を送るという人は少ない。伝統的なお年玉は“支払い”ではなく“文化”ですから、これからも現金でのやりとりが続くのではないでしょうか」

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