じんましんが新型コロナウイルス感染症で出ることも報告されています。私も論文に掲載されている臨床写真をいくつか確認しましたが、普通のじんましんと何ら変わらないブツブツでした。これもまた診察だけでは新型コロナウイルス感染症との区別は無理でしょう。

 また、水疱瘡(みずぼうそう)のようなブツブツが一定の人に出ることも報告されています。

 さらに、火だこのような足に網目状の赤青い皮疹が出ることも多く、これは新型コロナウイルスが血管内皮に感染することが原因であると考えられています。感染後、血管炎が起きるため、日常的に私たち皮膚科医が診察する皮膚の血管炎と同じ症状が出現することがわかっています。網目状の紫斑であったり、点状の出血がみられたりします。

 以上が新型コロナウイルス感染症にともなって出現する主な皮疹のパターンなのですが、最近では発症して時間がたってから皮膚症状が出現することも報告されています。

 その皮膚症状は脱毛です(文献)。患者さんの24.1%に脱毛症が出現し、脱毛の発症時期はコロナの症状が発現後平均58.6日後とのことでした。つまり新型コロナウイルス感染症が発症した後、約2カ月後に脱毛が起こることになります。また、脱毛症は平均76.4日間持続したとあります。これまで脱毛症は、エボラ出血熱やデング熱などの他のウイルス感染後の感染症でも頻発することが報告されています。新型コロナウイルス感染症から回復してなぜ脱毛症になるのか現在のところわかっていません。

 このように新型コロナウイルス感染症の患者さんは、発症直後だけでなく、しばらく時間がたってから皮膚症状が出現することがわかってきました。そしてどのタイプの皮疹も他の皮膚病にとてもよく似ているため、診察だけで診断をつけることは不可能です。

 そのため臨床の現場では、熱が出た、味覚障害がある、せきが止まらないなど、他の症状とあわせて新型コロナウイルス感染症を疑い検査をすることになります。

 皮膚症状の知見が集まり感染拡大予防の観点からひとつ有用な情報としては、熱がなくてもしもやけ様の症状(コロナのつま先)が出たらコロナの可能性もあるということでしょう。感染拡大を防ぐ手段として、もう一度若い人を中心に「コロナのつま先」については広く周知する必要があると考えます。また、この冬は毎日、自分のつま先をセルフチェックする習慣をつけるのがいいのではないでしょうか。

文献:Open Forum Infectious Diseases, Volume 7, Issue 11, November 2020,

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大塚篤司

大塚篤司

大塚篤司(おおつか・あつし)/1976年生まれ。千葉県出身。医師・医学博士。2003年信州大学医学部卒業。2012年チューリッヒ大学病院客員研究員、2017年京都大学医学部特定准教授を経て2021年より近畿大学医学部皮膚科学教室主任教授。皮膚科専門医。アレルギー専門医。がん治療認定医。がん・アレルギーのわかりやすい解説をモットーとし、コラムニストとして医師・患者間の橋渡し活動を行っている。Twitterは@otsukaman

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