大塚篤司(おおつか・あつし)/1976年生まれ。千葉県出身。医師・医学博士。2003年信州大学医学部卒業。2012年チューリッヒ大学病院客員研究員を経て2017年より京都大学医学部特定准教授。皮膚科専門医
大塚篤司(おおつか・あつし)/1976年生まれ。千葉県出身。医師・医学博士。2003年信州大学医学部卒業。2012年チューリッヒ大学病院客員研究員を経て2017年より京都大学医学部特定准教授。皮膚科専門医
※写真はイメージです(写真/Getty Images)
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 新型コロナウイルス感染症の患者には、赤いブツブツが出る皮膚症状や、後遺症として脱毛症が出ると報告されています。多くの報告が出て、知見が集積したことから、新型コロナウイルス感染症にともなう皮膚症状はパターンが決まっていることがわかってきました。京都大学医学部特定准教授で皮膚科医の大塚篤司医師が最新の医学情報を解説します。

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 新型コロナウイルス感染症の第3波が深刻な状況となっています。私が住む近畿圏でも連日多くの感染者が確認され、特に大阪では重症患者が増加しています。医療従事者に感染者が出た場合、多くの病院では院内感染を防ぐため業務を縮小して対応せざるを得ません。そうなると予定していた手術や治療が延期になり、新型コロナウイルス感染症以外の病気の治療にも影響を及ぼします。

 私の専門は皮膚科なので新型コロナウイルス感染症の治療に直接関わることはないのですが、外来で「コロナかも?」と患者さんを診察して思う場面もあります。それは新型コロナウイルス感染症にともなって皮膚症状が出現することがわかっているからです。

 2020年4月の段階では、新型コロナウイルス感染症の患者さんのうち0.2%程度に皮膚症状が出たと論文報告がありました。その後さまざまな報告があり、現在では0.2~20%程度出現する(人種差や地域による)と言われています。

 知見が集積したことから、新型コロナウイルス感染症にともなう皮膚症状はパターンが決まっていることがわかってきました。

 まず有名なものが「コロナのつま先」と呼ばれるものです。見た目はしもやけのような症状(主に足の指先が赤黒くなる)です。この「コロナのつま先」は患者さん全員に出るわけではなく、若い人で軽症の患者さんを中心に出現することがわかっています。

 報告で一番多いものが、全身に紅斑(こうはん)とよばれる赤いブツブツが出るタイプです。このタイプのブツブツは風疹などの他のウイルス感染症でも出現します。ですので、皮膚科専門医であっても皮疹だけをみて新型コロナウイルス感染症を診断するのは無理です。また、薬の副作用である薬疹でも同じ皮疹が出現します。そのため、新型コロナウイルス感染症の治療中にこのタイプのブツブツが出ると、コロナの皮疹なのか、治療で使っている薬剤の副作用なのか簡単には区別がつきません。

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大塚篤司

大塚篤司

大塚篤司(おおつか・あつし)/1976年生まれ。千葉県出身。医師・医学博士。2003年信州大学医学部卒業。2012年チューリッヒ大学病院客員研究員、2017年京都大学医学部特定准教授を経て2021年より近畿大学医学部皮膚科学教室主任教授。皮膚科専門医。アレルギー専門医。がん治療認定医。がん・アレルギーのわかりやすい解説をモットーとし、コラムニストとして医師・患者間の橋渡し活動を行っている。Twitterは@otsukaman

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