昨年、いわゆる闇営業騒動がありました。その流れで「ロンドンブーツ1号2号」の田村亮さんが謹慎生活に入りました。

 昨年12月にアップされた、これもYahoo!拙連載で相方の田村淳さんにロングインタビューをしました。言葉の端々に相方への愛が満ちていました。

 そして今年1月、淳さんとのトークライブという形で亮さんが仕事復帰しました。ライブには僕も足を運びましたが、終演後、会場を出ようとすると、出口のところに亮さんが立っていました。

 僕の顔を見るなり、両手で力いっぱい僕の手を握りしめながら言いました。

「淳から話は聞いています。いろいろと、本当に、ありがとうございます」

 言葉としては、それだけの短いものでしたが、その握力。両方の目からあふれるもの。そして、全身にみなぎる気持ちの熱。

 そこに、騒動を経て生まれた相方との強い繋がりを感じ、新たな亮さんをこれでもかと感じました。

 そういった心に突き刺さってくる思い。芸人さんを20年以上取材する中で、幾度となく肌で感じてきましたが、今回の渡部さんの言葉からそれを感じることはできなかった。

 あくまでも個人的な感覚ではありますが、そこはとてもショックでもありました。

 会見とは恐ろしい場です。真剣勝負のリングのように、これまで積み上げてきたものが一気に崩れることも思いっきり想定されます。

 それは、イメージが命の芸能人にとって、文字通り命取りになることでもあります。

 だからこそ、できる限りの準備をする。

 尋ねられるであろうことに対して、しっかりと言葉と情報を整理しておく。説明に際して、周囲に理解を得ないといけないところがあれば、きちんと話を通しておく。

 逆に言うと、それができてないうちは会見を開くべきではありません。

 これまで、準備不足が大きな原因となり、おそらくは本人が思っていたような会見にならなかった例をいくつも見てきました。

 スマートで、達者で、切れ者。そんなイメージを作り上げてきた渡部さんの顔から汗が噴き出し、同じ言葉を繰り返す。

 ボクシングにおけるジャブのような“大セオリー”とでもいうべき第一撃で、フラフラになっている。そんな印象が残り続けた場でもありました。

 時間は前にしか進まない。もう一回、時を戻して会見をやることはできません。

 この会見を踏まえて、今後、渡部さんがどう動くのか。言わずもがな、生半可な道のりのはずがありません。こちらも全力で、注視していきたいと思います。

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中西正男

中西正男

芸能記者。1974年、大阪府生まれ。立命館大学卒業後、デイリースポーツに入社。芸能担当として、故桂米朝さんのインタビューなどお笑いを中心に取材にあたる。取材を通じて若手からベテランまで広く芸人との付き合いがある。2012年に同社を退社し、井上公造氏の事務所「KOZOクリエイターズ」に所属。「上沼・高田のクギズケ!」「す・またん!」(読売テレビ)、「キャッチ!」(中京テレビ)、「旬感LIVE とれたてっ!」(関西テレビ)、「松井愛のすこ~し愛して♡」(MBSラジオ)、「ウラのウラまで浦川です」(ABCラジオ)などに出演中。著書に「なぜ、この芸人は売れ続けるのか?」。

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