感情的な話になると解決も難しい。無理せず対話していくことが大切だ※写真はイメージです((c)Getty Images)
感情的な話になると解決も難しい。無理せず対話していくことが大切だ※写真はイメージです((c)Getty Images)
(図表A)建替えを妨げるおもな要因とその対処法
(図表A)建替えを妨げるおもな要因とその対処法

 老朽化したマンションの建替えは一大事業。対応を誤ると問題がこじれて計画が停滞してしまう恐れもある。注意すべき点は何だろうか。組合の理事に選任されて困っている人や、運営に頭を悩ませている人の悩みに応える「資産価値を守る!マンション管理・修繕・建替え大全2021」(週刊朝日MOOK)から、抜粋して紹介する。

【図】建替えを妨げるおもな要因とその対処法

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 いざ建替えを目指して話し合いを始めたはいいけれども、いつまで経ってもまとまらない……。古い建物であればあるほど、老朽度は深刻になっていますし、住人の平均年齢も高くなっていきます。手をこまぬいているうちに選択肢が狭められ、ますますどうにもならなくなります。建替えを妨げる要因は、早期に発見し、具体的に対処していくことが必要です。

 おもな要因は図表Aに挙げた4点に集約されます。

 第1の壁となるのがお金。建替えにあたっては、新しくつくるマンションの床面積を増やして住戸の余剰分を売却することで、工事の費用を捻出しようとするケースが一般的です。

 そうした建替えの費用対効果の指標としてよく用いられるのが「還元率」です。これは、建替え後に区分所有者が無償で取得できる総専有面積(権利床)を、建替え前に所有していた総専有面積で割った比率のこと。余剰容積率が少ないマンションが多いので、近年では還元率が50%を下回ることが普通です。容積率に余裕がないマンションが増えていることに加え、建設費の上昇がその大きな要因です。

■法的手続きや交渉ごとはプロに相談する

 近年は住環境に求められる性能水準が高くなったことに加え、建設費が高くなってきているので、区分所有者の費用負担が増える傾向にあります。年を経てからのさらなる出費に抵抗を感じる人が多ければ、建替えの話が先に進まないのも当然だといえます。

 そういう場合の対処としては、この先、建替えをしなかった場合の改修費用や資産性の低下、また別の物件への住み替え時のコストや売却なども視野に入れて比較検討してみるとよいでしょう。マイナス面ではなく、未来を見据え、前向きな気持ちに切り替えてもらうことが期待できます。

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