権利問題も難題の一つ。借地権が絡んでいると地主との交渉をしなければなりません。また専有部分に賃借人がいれば、退去の話し合いが必要となります。法的な手続きや各種の交渉ごとについては、専門のノウハウを持ったデベロッパーやコンサルタントに相談したほうが賢明です。問題が明らかになった時点で早めにプロに協力してもらうとよいでしょう。

 そのほか公法上の制約の変化もハードルの高い課題です。竣工時から年数が経過する間に、敷地やマンションに関する法律が変わることで、建物が「既存不適格」の状態になると、新築後に建物の規模が大幅に小さくなってしまいます。そのために建替え自体が難しくなる、というケースも珍しくありません。

 ただし、法規は厳格なものですが、設計や計画の工夫によってクリアできる点もあります。自分たちで決めつけてしまわず、この点でもデベロッパーやコンサルタントの知見を求めてみることをお勧めします。隣接する土地やマンションを取り込んで計画したり、耐震性不足のときは自治体の認可を受けて容積率緩和を適用したり、と現行の法規に合わせて計画を見直し、工夫することで難条件をクリアした例も多々あるからです。

■対話をじっくりと重ねていくことが大切

 また、どこでもあり得るのが、住人同士の人間関係の問題です。長く住むうちに小さな行き違いが大きくこじれてしまったり、組合で議論をするうちに対立してしまったり。感情的な好き嫌いの話になると、解決も困難になります。

 そこまでのトラブルはなかったとしても、住人が高齢化してくると、変化そのものにおっくうになり、前向きな話になりにくい傾向があります。

 そういうときには、無理はせず、じっくりと対話を重ねていくことが大切です。不安なこと、疑問に思っていること、不満に思うことなどをじっくりと吐き出してもらいましょう。

「賛成」「反対」それぞれの立場の人たちが対立してしまわないように、時間をかけてマンションの行く末について意見を出し切ってもらうことで、少しずつ方向性や着地点が見えてくるはずです。

(文/渡辺圭彦、監修/旭化成不動産レジデンス マンション建替え研究所)

※週刊朝日MOOK「資産価値を守る!マンション管理・修繕・建替え大全2021」から