※写真はイメージです。本文とは関係ありません(Gettyimages)
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 作家・金原ひとみさんの最新作『fishy』は、女性同士の関係性に対する新たな視点を与えてくれる。出版社勤務で二児の母である弓子(37歳)、フリーのインテリアデザイナーで娘がひとりいるユリ(32歳)、フリーライターの美玖(28歳)が焼き鳥屋に集うところから物語がはじまる。いずれも飲みっぷり食べっぷりともによし。最新美容、恋愛、結婚生活……話題自体は特にめずらしいものではない。けれど、3人が交わす会話にはどことなく緊張感がある。

 美玖は、好きになった男性が結婚。その後はじめて関係をもつが、彼は妻をともない海外赴任してしまった。弓子と夫はセックスレスで、しかも夫は20代の女性と不倫中。そろそろ興信所に依頼しようと考えている。煮え切らないふたりにずばずばと手厳しいことをいうのが、ユリだ。本人があえて目をそらしていることにまで切り込む様はスリリングだが、ふたりとも言われっぱなしではない。はっきり反論し、それに対してユリがまたも持論を展開する。

 いわゆる“友だち”というには、緊張感がありすぎる。完全に腹を割っているのかというと、そうでもない。お互いの働き方に恋愛観、結婚観、家族観に対して思うところがありながらも、すべては口に出さない。

 こう書いてしまうと、「女性は裏表がある」「表面上は仲よく見えても実は陰険だ」といわれるかもしれない。同じような言説が、世の中にあふれている。それは、女性同士の関係への偏見に過ぎないのではないか。登場人物らと同じ20~30代女性の友情観はどうなっているのだろう。

■ママ友や新卒時代の仲間

「子どもが地元のスポーツチームに所属していて、そこでできたママ友がいます。最初は子どものことばかり話していましたが、自然に家庭のこと、仕事のこと、自分自身のことも互いに話すようになりましたね」

 と話すのは、現在、起業準備中のシングルマザーAさん(20代)。子どもの練習に付き添うと、必然的にほかの子の母親たちと過ごす時間が長くなり、親しくなったという。また、都内の企業に勤める20代後半のBさんは、次のように話してくれた。

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