もう一つのポイントが、家長昭博である。一昨年のリーグMVPは、今季も円熟味を増したプレーで攻撃に極上のアクセントを加えてチームを牽引した。そのパフォーマンスは日本代表に選ばれないのが不思議なほどで、欧州5大リーグでも間違いなく“違い”を作れるレベルだろう。だが、その家長も34歳。現時点で肉体的な衰えは見えないが、年齢による衰えは誰にでも必ず訪れる。

 小林悠が33歳となったセンターFWに関しては、後継者として20歳の宮代大聖がおり、レアンドロ・ダミアンのような外国人選手で埋めることも比較的容易だろうが、家長の代役および後継者となると探すのが非常に困難になる。早い段階で家長からポジションを奪い取る選手が頭角を現す、あるいは新たに獲得することが黄金期継続のためには必要になるだろう。

 栄枯盛衰、盛者必衰は世の常だが、世界を見渡せば、ユベントスやバイエルン・ミュンヘン、レアル・マドリードやバルセロナのように、いつの時代も勝ち続けるクラブはある。彼らは伝統を守りながらも、常に積極的な戦力補強で血の入れ替えを行っている。川崎に関して言えば、まずは若手の海外流出を極力、防ぐこと。資金力では浦和レッズやヴィッセル神戸に劣るだけに、今後もアカデミーで優秀な人材を育てることが重要で、近年の補強の軸になっている大学サッカー界に対しても引き続きスカウトが鋭い目を光らせたい。

 まずは中村憲剛が去った来季が一つ目の山、そして家長昭博に衰えが見えた時が二つ目の山。そこを乗り越えることができれば、5年後、10年後も優勝争いを続けることができる。鬼木達監督のマネジメント力に注視し、期待しながら、川崎フロンターレの今後の“進化”を見届けたい。