慰安婦裁判で敗訴した原告はなぜ「被害感情」を抱いたのか…日本的“被害者論”とは

朝日新聞出版の本

2020/11/21 08:02

1993年8月4日の「河野談話」を伝える朝日新聞記事 (c)朝日新聞社
1993年8月4日の「河野談話」を伝える朝日新聞記事 (c)朝日新聞社

 朝日新聞の報道によって、日本国民は「朝日新聞の加害行為を現在進行形で受けている」と原告らが訴えた裁判。慰安婦問題の本質と何だったのか――。

 朝日新聞編集委員・北野隆一氏が6年間の取材記録をまとめた『朝日新聞の慰安婦報道と裁判』(朝日選書)。朝日新聞の慰安婦報道と、これに対して右派3グループが朝日新聞社を相手に起こした集団訴訟の経過が記されている。

 いまも取材を続ける北野氏が、近年の研究や論争をもとに読み解く。

*  *  *
 戦時中に朝鮮の済州島で慰安婦を強制連行したとする吉田清治氏の証言(吉田証言)は虚偽だったとして、朝日新聞が検証記事を載せて吉田証言報道を取り消したのは2014年8月。強い批判が巻き起こり、朝日新聞の誤報で日本や日本人の名誉が傷つけられたなどとして2015年、朝日新聞社を相手取った集団訴訟が三つのグループから相次いで起こされた。

 私は検証記事取材班に参加したのをきっかけに、集団訴訟のほぼ一部始終を見届けた。2018年2月、いずれも原告敗訴で確定すると、一連の記録を本にまとめ、残すべきだと考え、今年8月、『朝日新聞の慰安婦報道と裁判』(朝日選書)として出版した。原告の主張と被告・朝日新聞社の反論、判決の結論を、裁判の流れに沿って詳しく紹介した。

 たとえば「朝日新聞を糺す国民会議」の呼びかけによる集団訴訟は訴状で、世界各地の慰安婦像建立などによって「旧軍将兵らはもとより、原告らを含む誇りある日本国民は、集団強姦犯人の子孫との濡れ衣を着せられ、筆舌に尽くし難い屈辱を受けている」と断言。さらに朝日の慰安婦報道をとりあげ、「原告らを含む日本国民は、本件一連の虚報以来、朝日新聞の加害行為を現在進行形で受けている」などと記した。

 訴えに対して東京高裁判決は、朝日の報道が原告らを「直接または間接に対象としたと認められる記事は一切ない」と認定。記載されたのは「旧日本軍の非人道的行為及び戦後の日本政府が真摯な対応をしていないと指摘する内容」であり、原告らについては「日本人だという以外に記事との間に何らの関係も認められない」との判断を示し、確定した。

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なぜ、原告たちは被害感情を抱いたのか?

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