劇場に設置された映画「鬼滅の刃 無限列車編」のポスター(撮影/飯塚大和)
劇場に設置された映画「鬼滅の刃 無限列車編」のポスター(撮影/飯塚大和)
劇場に設置された映画「鬼滅の刃 無限列車編」の宣伝セット(撮影/飯塚大和)
劇場に設置された映画「鬼滅の刃 無限列車編」の宣伝セット(撮影/飯塚大和)

 アニメ映画『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』の人気が衰えない。公開からもうすぐ1カ月を迎える現在も、各映画館ではバスの時刻表並みの上映回数が続き、客足も絶えることなく盛況が続く。都内にある映画館の11月10日(日)の上映回をチェックすると、ほぼ満席状態のスクリーンが大半だった。
 
 鬼滅ブームは、なぜ収まることなく続いているのか。リピートしたくなるほど入れ込んでしまう魅力とは何なのか。専門家たちに話を聞いた。

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 11月1日の日曜、『鬼滅の刃 無限列車編』を上映中の都内の映画館を訪れ、館内の様子を観察してみた。すると約30分刻みで、まるで大波が押し寄せるかのように、鬼滅の余韻に浸る鑑賞者たちがぞろぞろと映画館から出てきて、買い物フロアへと散っていく。その様子を見た他の買い物客からは「鬼滅かー」と、納得とも驚嘆ともつかぬ声が漏れ聞こえてくる。

 客層は子どもの姿が目立つものの、20代とおぼしきカップルから中年男性のグループまで、実に多様だった。夫婦で鑑賞した50代の男性は、「流行っているから来てみた。子ども連れが多かったけど、大人でも楽しめる内容。意外と感情移入しました」と話した。友人と観に来た30代の会社員女性は、「社会人にも共感できるような内容でよかった。特に煉獄さん(映画の主要キャラ)の、部下を守る姿勢や責任を果たす姿勢がすてきで、まさに理想の上司でした。この精神を、自分の上司に持たせたい」と、作品を自身の職場に重ねていた。衰え知らずの鬼滅ブーム。人気の理由や今後の予測を、2人の識者に聞いた。

 映画コメンテーターの有村昆氏は、「鬼滅のヒットは作品の力も大きいですが、枯渇感を非常にうまく見せていることも一因としてある」と分析する。

「混んでいるラーメン屋ほど、さらに混むのと同じ理屈です。ブーム初期にはコミックが売り切れ、今回の映画では映画の予約サイトがサーバーダウンするなど、予約が取りにくい状況が続きました。かつてのたまごっちブームや、コロナ禍初期のニンテンドースイッチのような状況です。結果的に、原作から入った人、アニメから入った人のほかに、世間がざわついていたから映画を観てみた人など、にわかの人も非常に増えた」(同)

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作品の「予備知識ゼロ」でも楽しめる理由