それに法廷闘争になったとして、裁判所の判断は、日本人のわれわれが親しんでいるものとは異なります。党派的で、予見できるタイプの裁判ではないのです。

――それは、つまるところ、法廷闘争で最高裁まで持ち込んだらトランプ氏に有利に働くということを意味しますか。米最高裁判事は、10月に任命されたエイミー・バレット氏を含めて保守派が多数を占めます。

 そこまで簡単には断定できません。そもそも、日本と米国では「憲法」をめぐる姿勢が違うのです。そこから理解しないといけません。

 日本の法廷は憲法解釈には争いがない状態です。憲法学者には性的マイノリティーの権利などより革新的な内容を認める人が多く、裁判所の判断は時代の変化より後になるといった傾向はあり、その違いはありますが、裁判所に関しては憲法の「読み方」は一定している。

 対して米国の場合、憲法の読み方に異なる思想があるのです。簡単にいえば、保守派の共和党よりの判事は、憲法が書かれたときの意図と想定を尊重し、成文をそのまま読む原典主義ですが、民主党は解釈しつつ読み込むタイプといえます。

 米国の裁判所の判断が、党派的で予見できるタイプではないと言ったのは、そういう意味です。保守派の判事が多数を占めるからといって、トランプ氏の意向に沿った判断がなされるというのは短絡的すぎますね。原則、それぞれの判事たちの良識と判断によります。

 大統領から指令が飛んで、裁判の結果が簡単に決まるのならば、それは独裁国家ですよね。独裁国家なら、今後の展開を読むのも簡単です。

このように、今回の大統領選は、不確定要素がありすぎます。これだけ接戦になってしまった限り、今後の展開は正直「読めない」としかいいようがありません。

(聞き手/AERAdot.編集部・鎌田倫子)