国際政治学者の三浦瑠麗氏(c)朝日新聞社
国際政治学者の三浦瑠麗氏(c)朝日新聞社

 大接戦となった米大統領選。いまだトランプ氏とバイデン氏のどちらが勝利するのか確定せず、郵便投票の扱いをめぐって両陣営の攻防が続く。異例の選挙戦について国政政治学者・三浦瑠麗氏にインタビュー。勝敗確定までに何がポイントとなるのか、専門家の見立てを聞いた。

【別カット】国際政治学者の三浦瑠麗氏。対談時にほほえんだ一枚

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――驚いたことに、いまだ勝者が決まっていません。米大統領選では一方が負けを認め、もう一方が勝利宣言をするという流れが慣例ですが、両陣営にその動きはみられません。

 現時点(日本時間2020年11月5日夕)で、両者が負けを認めないのは当たり前です。メディアの州ごとの当確がひっくり返ったりしていますからね。今回、郵便投票を取り入れたのがまずかった。開票作業をいつ始めるか、いつまで届いた分が有効かなど州ごとに細かいルールが違うわけです。

――郵便投票が取り入れられたことによって、それまで大幅にリードしていたのにある時点で郵便投票の票が大量にカウントされて急に形勢逆転するという現象が起きています。トランプ支持者は「選挙を盗まれた」などと不満を述べています。

通常の選挙では、仮に開票率が票全体の70%だとして、残り30%はどの地域の票がこれから開くかわかっています。地域ごとに候補者がどれだけ強いか弱いかもわかっている。開票率が100%に達する前にその州の勝敗が確実に予測できるわけです。候補者らも納得するでしょう。

ところが今回郵便投票によって、残りの票のうち、いつ、どれだけの票が、どんな比率で自分に入ってくるかわからないわけです。となると、負けを認めない方がいいのは当然です。

現時点で、アリゾナ州ではトランプ氏が猛追していると報じられ、ペンシルベニア州はバイデン氏が追い上げています。開票作業に時間がかかるので、トランプ氏も負けを認めないでしょうし、バイデン氏だって同じ状況ならば認めないでしょう。

――トランプ陣営は、いくつかの激戦州で開票作業の差し止めを求めて提訴しています。ジョージ・ブッシュ氏とアル・ゴア氏が争った2000年の大統領選挙のようになるのではないか、という声もあります。両陣営は大票田のフロリダ州の集計をめぐって1カ月以上の法廷闘争を繰り広げ、最終的に連邦最高裁判決によってゴア氏が「同意はできないが、受け入れる」と敗北宣言をしました。

 トランプ氏もバイデン氏も現時点で、負けを認めないという点は同じですが、訴訟に対する姿勢は異なると思います。バイデン陣営はどのくらい勝つ見込みがありそうかを見極めて、訴訟について判断するでしょう。その点は、2000年のゴア氏と同じ行動原理といえます。

 一方のトランプ氏は、現実を見極めるというよりも、見かけ上「接戦」であれば、政治闘争に持ち込んでいこうとしている。とことん争う傾向がみてとれます。こうしたトランプ氏のキャラクターは「前代未聞」です。

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最高裁まで持ち込んだらトランプ氏が有利?