村井俊哉医師(左)、水野雅文医師
村井俊哉医師(左)、水野雅文医師
統合失調症についてのデータ※週刊朝日2020年11月13日号より
統合失調症についてのデータ※週刊朝日2020年11月13日号より
統合失調症に特徴的な症状※週刊朝日2020年11月13日号より
統合失調症に特徴的な症状※週刊朝日2020年11月13日号より

 精神科の病気の中でも発症頻度が高い統合失調症。10代後半から30代前半の若い世代に発症しやすいのが特徴だ。早期治療が重要視されるが、受診の遅れが問題となっている。周囲の人が病気に気づき、受診につなげることが大切だ。

【データ】発症に男女差はある?かかりやすい年代は?

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 統合失調症は脳の機能がうまく働かなくなり、考えや感情がまとまりにくくなる病気だ。およそ100人に1人がかかり、精神科の病気の中でも頻度が高い。これから社会で活躍しようとしている10代後半から30代前半の若い世代に発症しやすい特徴がある。京都大学病院精神科神経科教授の村井俊哉医師はこう話す。

「怖い病気、治らない病気といった間違ったイメージで捉えられていることが多く、どのような病気なのかあまり知られていないのが現状です」

■ 特徴的な症状は幻覚と妄想 不安や不眠といった前ぶれも

 症状は大きく「陽性症状」と「陰性症状」に分けられる。

 統合失調症の特徴とも言えるのが、幻覚や妄想といった陽性症状だ。実際には存在しないものが本人にだけ現れたり、真実ではないことを信じ込んでしまう。幻覚では、幻視よりも幻聴のほうが多く、聞こえないはずの音や声に悩まされる。村井医師は言う。

「統合失調症の幻覚や妄想は『悪口を言われている』『食事に毒を盛られた』といった、他者が自分に危害を加えてくるようなネガティブな内容が多い。そのため本人にとって大変な苦痛になります」

 一方、陰性症状は、意欲が低下し、感情の変化が減って表情が乏しくなる、人との会話や接触を避けて引きこもるなど、社会生活に支障が出ることも少なくない。また集中力や記憶力の低下、作業の手順がわからなくなるといった「認知機能障害」を生じることもある。

 一般に不安や不眠などの前触れ症状が現れる「前兆期」から始まり、陽性症状中心の「急性期」、陽性症状が治まって陰性症状が目立つ「回復期」を経て、元気が出てくる「安定期」という経過をたどる。とはいえ、陰性症状はほとんど起きずに陽性症状だけの人、陰性症状が長く続く人など、症状の現れ方や経過はさまざまだ。また、順調に回復していく人がいる一方で、回復期や安定期に再発して再び急性期が始まるケースもある。

 統合失調症は再発しやすく治療に長い時間がかかる難しい病気だが、効果が高い薬が開発されるなど治療が進歩し、十分な回復が期待できるようになった。

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半数が回復する、しかし原因さがしはNG