私は積極的にマンボウの知られざる世界を一般の方々に普及するマンである。

【写真】ギネス認定された「世界最重量硬骨魚」

 前回寄稿した「一昔前に千葉県で漁獲された2300kgのウシマンボウが『世界一重い硬骨魚』としてギネス世界記録に認定・今年も保持された」という記事は大きな反響があり、その巨大さに驚いたというコメントが多く寄せられた。皆さんの好奇心をくすぐらせることができてうれしい限りである。

 今回は、上述のエピソードも含んだ私の2冊目の著書『マンボウは上を向いてねむるのか』の発売1周年を記念して、自らこの本の魅力をご紹介させていただきたい!

■本書の概要と裏話

 本書は基本的にマンボウのことしか書いていない、小学生(中学年)以上をターゲットとした本である。本当は平成最後のマンボウ本として出版する予定だったが、予定が遅れて令和初のマンボウ本として、2019年10月中旬に出版された。発売後から今年にかけて、講演などいろいろ出版記念イベントを行う予定だったが、新型コロナのせいで全部なくなってしまった……無念である。

 本書の表紙と挿絵は「家の裏でマンボウが死んでるP」の竜宮ツカサ、帯はしょこたんこと中川翔子など、マンボウに縁のある豪華ゲストとも密かにコラボした、生物系としては異色の本である(敬称略)。

 本書はこれ単体で読んでもお楽しみいただけるが、前作『マンボウのひみつ』の続編としてお読みいただけると、もっと楽しめる。実際の私のマンボウ研究の進展と連動しているのだ。

 本書の大テーマは「マンボウと水族館」である。何故このテーマにしたかというと、漁業関係者でない人々がマンボウと接点をもつ機会はほぼ水族館しかないからだ。日本では割と普通に水族館でマンボウを見ることができるが、世界レベルに視野を広げると、マンボウを飼っている水族館は結構珍しい。皆さんはマンボウの実物を見ることができてとても幸運である。世界有数のマンボウ飼育国にいる研究者としては、マンボウと水族館にまつわるエピソードを何かしらの本にまとめたいとずっと考えていた。

■各章のダイジェスト

 本書は全7章で構成されている。第1章は私がマンボウ研究者になるまでのエピソード、生物の研究は分類学が基本でかつ最も重要であることについて。第2章は2017年にマンボウ属の新種として公表されたカクレマンボウMola tectaの、新種として公表されるまでの過程・研究の裏側について。第3章はマンボウ科魚類の形態的見分け方、マンボウ属3種のわかり始めた生態の違い、ウシマンボウMola alexandriniの学名が特定されるまでについて。

 第4章は水族館の歴史、知られざる役割、仕事や技術、研究について。第5章はマンボウの飼育の方法、環境、成長について。第6章は水族館が取り組んできたマンボウ研究、水族館で観察することができるマンボウの行動、一般の人と一緒に取り組んだ水族館でのマンボウ研究について。第7章はサンシャイン水族館で飼育されたマンボウ1個体の長期的行動観察、夜に特徴的に観察された上向き行動について。

 本書は読み進めていくうちに、死んだ標本を扱う分類学的な話から、生きた標本を扱う行動学的な話へとシフトしていく構成になっており、研究材料の生死、研究機関としての水族館の捉え方、一般の人でもできるマンボウ研究の方法をざっくり学ぶことができる。

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水族館の水槽を実験水槽と考える