●祖先が神なのは豪族も同じ

 なかでも、武蔵国に合併した知々夫国(現在の秩父・児玉付近)に残る歴史の遺物には、旧石器時代や縄文時代の遺跡を含めて、日本に欠かせないものが多く含まれている。旧事紀(くじき)などの記録によれば、各国の国造(くにのみやつこ/地方の首長を指す)の祖先は、天照大神をはじめとした神々である場合が多く、无邪志国造の祖は天照大神であり、知々夫国造の祖は八意思兼神(やごころおもいかねのかみ)とある。八意思兼神とは、天照大神が天岩戸隠れをした際、どうやって外に引っ張り出すかという案を講じた神で、創建から2100年が過ぎたといわれる秩父神社の祭神として祭られ続けている。

●オオカミ様に御利益をいただく三峯神社

 さて、日本武尊は父・景行天皇の命で西に東に征伐へ出向くのだが、あまりに伝説が各地に残りすぎて特に東国に入ってからのルートがさっぱり不明である。とはいえ、秩父神社のような古くからの伝説を持つ土地をくまなく歩いているようにも見える。中でも秩父には日本武尊伝説が色濃く残り、秩父神社とともに秩父三社と呼ばれる三峯神社と寳登山神社の創建に日本武尊は深く関わっている。加えて、この土地では日本武尊を助けた神獣として犬(オオカミ/大神)があがめられており、日本武尊が創建したと伝わる三峯神社には「大口真神(御犬神)」がおられ、この御利益で今なお「どろぼう除け札」が人気を集めている。

●銭神様にお願いすればお金に不自由しない

 飛鳥時代には、秩父で採掘された和銅(にきあかがね)が朝廷に献上され、日本で最初に鋳造・発行された銭貨「和同開珎」となった。それまでに流通していた貨幣はなかったと考えられており、和銅が日本を大きく動かしたとも言えるだろう。ちなみにこの和銅の発掘を瑞祥として元号が和同と変えられたのである。この採掘場所は秩父市黒谷にあり、和銅遺跡として見学できる。そしてその近くに和銅発見を祈念して創建されたと伝わる「聖神社」が鎮座する。和同開珎ゆかりの神社であることから、「銭神様」の別名を持つこの神社は、「お金に不自由しない」御利益があるとして大変人気が高い。

 三峯神社といえば、境内には独特のこま犬ならぬ狛狼がいくつもおかれ、三ツ鳥居という珍しい鳥居が参道を守っている。この鳥居の形は奈良県にある大神(おおみわ)神社のご神体・三輪山の山中にあるものが原型らしい。大神神社といえば日本最古(のひとつ)とされる神社。大神を眷属(けんぞく)に同じ形の鳥居を持つ三峯神社に日本武尊は何を祭ったのだろうか。東征という体で、日本全国の有力都市を巡っていたようにも思える日本武尊が、この頃の秩父に強い関心を寄せたことは間違いないと思う。たとえ日本武尊が伝説の人物かもしれないとしても。(文・写真:『東京のパワースポットを歩く』・鈴子)

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