武田:自分が本好きだからなのでしょうが、上出さんの本と映像を比べると、本のほうが圧倒的に面白いと思うんです。本を読む時って、書かれている文章から、頭の中で広げていく景色があって、この人はこういう人物なんだろうと思い浮かべたイメージを、ぶつけ合いながら更新していく。本を読んだ後で映像を見ると、ある種、答え合わせになるから、自分の頭の中でふくらませていたイメージが間違いだったりもするんですけど、楽しいか楽しくないかで言うと、ふくらませているときのほうが楽しかったりするんですよね。

上出:絶対そうだと思います。

武田:「わかりやすさ」はサービス、なんて話がありましたけど、この本の圧というか「過剰さ」も、サービスでもあると思うんです。自分はヘヴィメタルがすごく好きなんですが、この上出さんの本はヘヴィーメタル。もういいよ、と言われるぐらいのギターソロの長さ。で、自分はこれが大好物。「このしつこいギターソロ、いいよね!」って。

上出:はははは。

武田:一方、映像版はパンクです。理念みたいなものを破壊しながら勢いよく進む。その鋭さも最高ですが、本には、メタルの「まだやるのか!?」という過剰さがあります。(構成/長瀬千雅)

※「『テラスハウス』は叩かれ『モニタリング』はウケる…テレビ業界的なものに操られる視聴者たち」へつづく

■上出遼平(かみで・りょうへい)
1989年、東京都生まれ。2011年株式会社テレビ東京に入社。『ハイパーハードボイルドグルメリポート』シリーズの企画、演出、撮影、編集まで番組制作の全課程を担う。空いた時間は山歩き。

■武田砂鉄(たけだ・さてつ)
1982年、東京都生まれ。出版社勤務を経て、2014年からフリーライターに。新聞への寄稿や、週刊誌、文芸誌、ファッション誌など幅広いメディアで連載を多数執筆するほか、ラジオ番組のパーソナリティとしても活躍。9月28日スタートの新番組『アシタノカレッジ』(TBSラジオ、月~金、22時~)の金曜パーソナリティを務める。