準々決勝の木更津中央戦(現木更津総合)では、1対0とリードの7回1死二、三塁のピンチに、強烈なショートライナーを横っ飛びに好捕し、すかさず三塁に送球。併殺でスリーアウトチェンジと思われたが、ワンバウンド捕球と判定され、同点を許す不運のあと、延長11回にサヨナラ負けを喫した。

 2年連続の甲子園は夢と消えたが、その後、甲子園を本拠とする阪神の4番“ミスター・タイガース”として高校時代に無縁だった本塁打を量産することになるのだから、人生どう転ぶか本当にわからない。

 高校通算本塁打ランキングでは、横浜高時代の多村仁(横浜-ソフトバンク-DeNA-中日)が13本、広島商時代の柳田悠岐(ソフトバンク)が11本。「意外に少ない」と思うファンも多いかもしれない。

 だが、2年夏にレギュラーに定着した多村は、翌春のセンバツまでわずか1本塁打と成長途上。柳田もベンチ入りをはたした2年秋は代打要員で出番が限られていたため、1年のときから主軸を打っていた選手に比べて本塁打が少ないのは、当然の結果と言える。

 高校最後の夏、多村は5番、柳田は3番を打ち、いずれも県大会で2試合連続本塁打を記録。“未来の大砲”を十二分に予感させている。(文・久保田龍雄)

●プロフィール
久保田龍雄/1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球 を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。最新刊は電子書籍プロ野球B級ニュース事件簿2019」(野球文明叢書)

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久保田龍雄

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久保田龍雄/1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。

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