「スイングスピードの速さはトップクラス。長打力もあり打撃は十分に通用すると思った。俊足で肩も強く3拍子揃った選手。背番号51でイチローのような選手を目指して欲しいと球団全体の期待度は高かった。スケールの大きなプレーで、遠くから見ても伊藤の存在感が分かるほどだった」(阪神球団関係者)

 一方、高山は東京の強豪・日大三高で1年時秋から1番・右翼手でレギュラーに定着。秋季東京都大会では打率.435を記録、チームを翌年春のセンバツ大会出場、準優勝へと導いた。3年時は春夏とも甲子園に出場し、春は打率.529、夏は打率.500をマークし、チームの夏制覇に貢献した。明治大では1年から外野のレギュラーを奪取。東京六大学の最多となる通算131安打、打率.324、8本塁打、45打点、18盗塁、ベストナイン6回受賞と明治大の歴史に残る選手だった。

 15年オフに、ドラフト1位で阪神に入団。開幕戦1番左翼手でデビューを果たすと、134試合に出場して打率.275、8本塁打、65打点を記録して新人王に輝く。その後はさらなる飛躍が期待されたものの、守備の不安もあり打撃の成績も下降。ここ数年はスタメン出場回数も減っている。

「足の速さが飛び抜けていた。かつての赤星憲広を思わせるようなスピードとともに、打撃は福留孝介のような力強さがあった。確実性と長打力、速さを併せ持った1番打者が現れたと大きな期待を抱いた。守備は不安を感じたが、補うだけの打力が魅力だった」(阪神関係者)

 伊藤と高山だけでなく、阪神では大卒野手は育ちにくい。

 05年以降、捕手4人、内野手6人、外野手12人の合計22人の大卒野手をドラフトで獲得(うち育成は4人)。レギュラーとして試合に出続けているのは、捕手の梅野隆太郎と大山悠輔ぐらい。その他では2番手捕手の坂本誠志郎、代打や守備固めの江越大賀、陽川尚将あたりしか目につかない。何か根本的な問題があるのだろうか……。

「プロで一流になるのが難しいのは当然。大卒選手は即戦力という考え方もあるが、プロ入り後さらなる成長も必要。大卒なら22~3歳であり、技術、体力、精神すべてで伸び代はある。育成を支えるハード、ソフト両面が他球団に比べ劣っていると言わざるを得ない」

 阪神担当記者は育成に対する考え方の問題を指摘する。

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人気球団の“甘え”がくすぶりの原因なのか…