一瞬の出来事におじいさんは呆然としながら子犬のそばに行き、抱き抱え、男の子を責めることもなく帰っていきました。責める心の余裕すらなかったのだと思います。男の子もひじやひざから血を流してうめき声をだしていました。

 この事故は、スピードさえ出ていなければ防げたはずです。

 また、「無理な追い越しをしないこと」も大切です。警察庁の統計によると、事故の状況は、追突や正面衝突よりも追い越し追い抜き時のほうが多いのです(※)。先日もフード宅配の自転車が、渋滞する車の間を縫うように蛇行運転し、いろんなところからクラクションを鳴らされていました。

 前方をのろのろ運転で道を塞いでいる人に出くわすと「追い越したい!」という気持ちになるのもわかります。そうした場面でスピードをキープしたまま追い越していく人をよく見かけますが、一歩間違ったら事故につながるパターンです。

 一度、実際に事故を目撃しました。高齢の女性がのんびり自転車を運転していたところ、後ろから抜かそうとした学生の自転車が接触し、女性は転倒。その場から動けなくなってしまいました。けがのせいだけでなく、驚きと恐怖で体がかたまってしまったのでしょう。

 筆者はいつも大きな声で「すみませーん!追い越させてくださーい!」と声かけします。すると自転車を運転している人は気づいて「お先にどーぞ!」と道を開けてくれます。筆者の経験では、声かけをしてトラブルになったこともありません。

 自転車は、自動車よりもゆっくりと景色を楽しむことができ、適度な運動にもなるすてきな乗り物です。だからこそ、自分も周りの人も気持ちよく乗りたいもの。交通ルールを守って、快適な自転車ライフを送りませんか?(取材・文/スローマリッジ取材班 児玉響子)

※  警察庁ウェブサイト
○自転車関連事故件数の推移
○自転車安全利用五則
https://www.npa.go.jp/bureau/traffic/bicycle/info.html
○自転車関連事故の状況
https://www.npa.go.jp/bureau/traffic/bicycle/pdf/bicycle_9.pdf