神経根症は、消炎鎮痛薬や神経障害性疼痛治療薬などの薬物治療、牽引療法、神経ブロック注射、頸椎カラーを用いた固定・安静などの保存療法で、経過観察をするという。

「ただし、当初から筋力低下が見られる場合は予後が悪い場合があり、早めの手術を検討します」(新井医師)

 一方、脊髄症であれば障害部位がより広範で症状も重度になるので、保存療法を続けずに、神経障害の回復が望める早期のうちに手術をおこなうことが必要だ。治療方針が大きく異なるため、正しい鑑別が重要となる。

 手術をおこなう目的は、症状の進行を止めること、困っている症状を軽快させることだ。しかし、どの程度改善できるかを術前に予測することは難しい。青山医師はこう話す。

「各症状がいつごろどのように発症したか、その推移が治療による効果を予測するうえで重要です。症状が出てからの期間が短い症状ほど治りやすい傾向があります。そのなかで、しびれは最後まで残って治りにくいことが多い症状です」

 手術選択について、新井医師は次のように話す。

「前側にある病変に対しては、前方からアプローチする手術が合理的です。1カ所の椎間板であれば、『前方除圧固定術』のよい適応となります」

 この手術は、首の前側を切開し、頸椎の一部を削って病変を直接摘出した後、椎体間に自家骨や人工のケージなどを挿入して固定する。

「神経根症であれば、後方から切開して頸椎の一部の椎弓を切除し、神経の通り道である脊柱管を広げる『椎弓形成術』や『椎間孔拡大術』を選ぶこともあります。病状に応じて有効な手術法を選択します」(新井医師)

■ 前方と後方、どちらからのアプローチがいい?気になる合併症…

 前方と後方、どちらから到達する方法を選択するかについては、各病院で方針に違いもみられる。青山医師はこう話す。

「いずれも、手術の成績は変わらないといわれています。前方除圧固定術はオーソドックスで、術後の症状の改善度が比較的高い手術法です」

 手術の合併症として、頸部の腫れや声のかすれ、誤嚥、年数を経ると固定した頸椎の上下に再び障害が起こる隣接椎間板障害などの問題がある。

「ヘルニアは自然に縮小することも期待できることから、当院では基本的に後方からアプローチをします。筋肉を温存しながら椎弓を一部切除する、選択的椎弓切除術を積極的におこなっています」(青山医師)


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