エースで4番の松尾洋和を中心とする守りのチームは、長崎大会準々決勝で佐世保実、準決勝で長崎南山の強豪に僅差で守り勝ち、決勝も海星に7対3と快勝。無欲がもたらした甲子園に、26歳の宮原更三監督は「選手の練習に対する集中力が実を結んだ。甲子園では楽しく、思いきり戦います」とコメントした。

 1回戦の関東一戦は、松尾の得意球・カーブが決まらなかったことが、幸運を呼ぶ。直球とスライダーを多投したところ、ビデオで松尾を研究し、カーブを狙っていた関東一打線は意表をつかれ、終わってみれば2対0の完封勝利。2回戦は宿毛との初出場同士対決を4対1で制し、3回戦も中越に3対2と競り勝ち、あれよあれよという間に8強入り。

 準々決勝の樟南戦では、連投疲れの松尾が制球を乱し、自慢の守備も乱れて、5対14と大敗したが、5回で降板後、9回に再びマウンドに立った松尾は「普通のチームの僕らがここまで来られた。それだけで十分です」と胸を張った。

 93年に宮崎県小林市内の高校として初の甲子園出場をはたした小林西も、エースで4番の笹山洋一が県大会から1人で投げ抜き、甲子園でも学法石川、長崎日大、高知商を破って8強入り。準々決勝で常総学院に延長10回の末、3対6で敗れたが、9回2死から同点に追いつく粘りは見事だった。(文・久保田龍雄)

●プロフィール
久保田龍雄/1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。最新刊は電子書籍プロ野球B級ニュース事件簿2019」(野球文明叢書)。

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久保田龍雄/1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。

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