「10万円もらったら、使い道は?」と聞かれて「えーと、旅行? うふふふ」とか「生活費! あははは」とか「おしゃれしちゃおうかなとか(笑)」など、とにかく、言葉の最後を笑いで終わらせる日本人がたくさんいました。

「どうして笑うんだろう?」と考えると、いろんな理由が浮かびます。

「意見を言うことに慣れてない」とか「単純に照れている」「人間関係のクッション」「自分に自信がない」とか、収録のスタジオではいろいろ出ました。

 やってみると分かりますが、語尾の最後に笑いを入れると、断定を避けることができます。

「10万円もらった感想? もっと欲しい! あははは」と言うと、「もっと欲しい」という断定を和らげることができるのです。

 どうして和らげる必要があるんだろうと考えると、対立を避けたいとか、意見に責任を持ちたくない、自信がないとか浮かびます。

 唯一の正解というわけではなく、人によってさまざまでしょう。

 でも、「自分は意見を言った後、笑っている」と気付くことは、自分自身の「無意識の思考」を客観的に見ることができるようになるということです。

「無意識の思考習慣」を自覚すれば、もう無意識ではなくなるのです。

 セナさんの「母親に対する意識」は、まさにその状態だと思います。

 母親はセナさんに子育てのヒントと手がかりをたくさんくれたのです。こうしてはいけない、こういう言い方をしてはいけない、こういう接し方をしてはいけない――じつに明快なアドバイスです。

 世間では、こういう人を「反面教師」と呼びます。

「反面教師」も、また教師です。してはいけないことについて、充分な手がかりをくれるのですから。

「反面教師」のアドバイスと「因果」なんていう意味不明の言葉は関係ありません。

 よくあるのは、中・高校の部活動で、暴力的な指導をしていた先輩達が卒業した後、次に続く後輩が「俺達は、あんな指導はやめよう。部活は楽しくないと意味がない」と、ガラリと雰囲気を変える、なんてことです。

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「負の遺産」を受け継ぐ人達もいるが…