ああ、そうですよ、そうです。たまには正義が勝ってくれなきゃ。正義はどんな姿をしているんですか?

「これからのリーダーは普段から国民に語り掛け、対話できる能力が必要です。我々が立ち向かう時代は、どの国も、どの歴史も経験したことない段階に入るので、明確に『これだ』という答えが簡単に出るほど単純じゃないと思うんです。だから国民もさ迷ってるでしょう? だからリーダーも自分は悩んでいますと、国民に対してはっきりと言っていいと思います。ただし、悩んでるだけじゃ駄目なんで、自分なりの見通しと、選択肢は最低限示さないとならない。いっしょに悩んでいっしょに考え、これがたった一つの正解じゃないかもしれないけど、ただ選べるのは一つだという前提で、その人の責任において国民の決断を促す、一緒に移行するという形のリーダーシップ以外、本当の解決にならないんじゃないかと。誰を批判するつもりはないけど、橋下徹さん、山本太郎さん、小池百合子さん、小泉純一郎さん、それぞれに熱狂したけど、それは本当の解決じゃないですよね。一時、気が紛れるかもしれない。一時目をそらすことで気持ちよくなるかもしれない。ただ本物の問題とか、本物の構造変化に正しくアプローチしているという確信はないはずなんです。これからは劇薬や偽薬じゃなく、漢方薬みたいな体質改善を緩やかに促していくリーダーシップが求められているんじゃないかという気がするんですよね」

 では、小川先生が総理大臣になったら何がしたいですか?

「新しいステージに社会を移行させます。そこで回復すべきは成長とか浮かれた話ではなく、持続可能性です。将来に至るまで、後々の世代まで、この社会は確かに続くと。温暖化もなければ、社会保障不安もない、財政赤字も拡大しない、こんな豪雨被害もない、そして政治を信頼できる、そういう社会にしたい、いや、します。そのための社会保障改革。これは国民の痛みをともなう話だけど、これをまずやり遂げないといけない。さらに世界に開かれた国を作る。人口減が激しいから、活力を維持するために世界に開かれた国にする。エネルギー環境調和を徹底して、温暖化とか原発依存とかは徐々に止める。最後にこれも壮大ですけど、国際社会をあげて解決しないといけない問題がほとんどなんで、国際社会の再構築に日本としてリード役を果たしたい。この4つのことをやりたいですね」

『なぜ君は総理大臣になれないのか』~誠実さを笑うか泣くか いまの日本が浮かびあがる――コロナ禍の時代の変化の中にある今こそ必見の映画だ。ちなみに小川さん、まだ映画を1回も見てないと聞いて驚いた。

「これは監督の作品なので、僕が見て人に勧めたりするのは、作品の中立性や客観性を犯す可能性がありますから」

 なるほど、小川さんらしい。

●和田静香(わだ・しずか)/1965年、千葉県生まれ。音楽評論家・作詞家の湯川れい子のアシスタントを経てフリーの音楽ライターに。趣味の大相撲観戦が高じて最近は相撲についても書く。著書に『スー女のみかた 相撲ってなんて面白い!』『東京ロック・バー物語』など。