現在、これらTh2サイトカインを阻害するデュピクセントがアトピー性皮膚炎の治療薬として使用可能です。デュピクセントはアトピー患者さんにとても有効です。さらに、デュピクセントはかゆみにもよく効きます。しかし、値段が高く2週間に1回の注射が必要なため、全ての患者さんに使えるわけではありませんでした。まだまだアトピーの治療の武器として新薬は必要だったのです。

 さて、IL-4とIL-13から引き起こされるかゆみですが、そのシグナルにJAKが関係しているという論文が出ました。また、かゆみの原因となる別のサイトカインであるIL-31も新規JAK阻害剤であるコレクチム軟膏はブロックします(文献3)。こういったことから、JAK阻害剤であるコレクチム軟膏はアトピーの症状を改善するだけでなく、かゆみにも効果を発揮すると予想されていましたし、実際にかゆみを抑えたというデータが出たわけです。

 さらに、コレクチム軟膏がアトピーのカサカサ肌の改善にもつながる可能性があることなど、基礎研究の分野でメカニズム解明が進んでいます(文献4)。

 幸い大きな副作用はいまのところないようですが、コレクチム軟膏の副作用としてニキビやかぶれなども少数報告されています。

 以上、今回はコレクチム軟膏について作用メカニズムを交えて紹介しました。コレクチム軟膏の使用を検討したい患者さんは、まず主治医と相談しましょう。多くの患者さんと同じように私たち医者もこの新薬に大きな期待を寄せています。だからこそ、正しい使い方を理解し、安全に使用することが最重要であると肝に銘じておきたいと思います。

文献1: J Am Acad Dermatol. 2020 Apr;82(4):823-831.
文献2: Cell. 2017 Sep 21;171(1):217-228.e13.
文献3: J Dermatol Sci. 2020 Feb;97(2):161-164.
文献4: J Allergy Clin Immunol. 2015 Sep;136(3):667-677.e7.

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大塚篤司

大塚篤司

大塚篤司(おおつか・あつし)/1976年生まれ。千葉県出身。医師・医学博士。2003年信州大学医学部卒業。2012年チューリッヒ大学病院客員研究員、2017年京都大学医学部特定准教授を経て2021年より近畿大学医学部皮膚科学教室主任教授。皮膚科専門医。アレルギー専門医。がん治療認定医。がん・アレルギーのわかりやすい解説をモットーとし、コラムニストとして医師・患者間の橋渡し活動を行っている。Twitterは@otsukaman

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