0対0の2回、ロッテは1死一、二塁から酒井忠晴が右中間を抜く長打性の当たりを放った。ロッテがまず1点を先制と思われたが、一塁走者・ブレイディーが中飛と勘違いしたことから、話がおかしくなる。

 ハーフウェイから慌てて一塁に戻ろうとしたブレイディーだったが、当然と言うべきか、すでに一塁を回っていた打者走者の酒井に追い越されてしまった。

 悪いときには悪いことが重なるもので、二塁走者・大村巌も中飛でのタッチアップを想定して、ハーフウェイで打球の行方を見守っていたため、先制のホームを踏み損ねてしまった。

 この結果、ブレイディーにアウトが宣告され、2死一、三塁から試合再開となったが、ややこしいことに、実はこれも審判の勘違いだった。野球規則によれば、この場合、アウトになるのは追い越した酒井だから、2死二、三塁で試合再開しなければいけなかったのだ。

 試合後、小寺昌治球審が「本来なら打者走者がアウト。適用を間違えてしまった」と説明したときには、あとの祭り。二、三塁だったら、マウンドの工藤公康に与えるプレッシャーもハンパではなかっただろうし、この場面で右飛に倒れた清水将海の結果もまた違っていたはず。

 結局、ロッテは黒木知宏の4安打完投も報われず、0対1で惜敗。山本功児監督も「(みんな)勘違いも甚だしい。大村も無死ならわかるが、1死なら無理にタッチアップする必要もないんだ」とオカンムリだった。

 これだけ勘違いが重なれば、勝利の女神が逃げてしまうのもごもっとも?(文・久保田龍雄)

●プロフィール
久保田龍雄/1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。最新刊は電子書籍プロ野球B級ニュース事件簿2019」(野球文明叢書)。

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久保田龍雄

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久保田龍雄/1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。

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