そのためには、何をすればいいか。

 まず、相手のことを褒めようとするのではなく、相手のことを理解しようとしてみてください。

 そうすると相手の人柄や気質がだんだんと見えてきます。その時点で長所が見えてくることは多いのですが、それはその人の「本質の周辺」である可能性が高いので、そこを褒めようとするとうまく伝わらないことが往々にしてあります。

 もう少し辛抱して相手をしっかり見ていくと、やがて相手の「本質」が見えてきます。それがわかった時に心から褒めるようにする。そうすると、その人はあなたの言葉に感動し、本当の意味で心と心が通じ合うのです。

 本質的な褒め言葉が出てくるのは、相手自身や相手の行動の意図を深く理解している時だけです。それがわかれば、会ったらとりあえず褒めるということも必然的になくなるでしょう。

 また、褒め言葉を発するタイミングは、必ずしも早ければいいというわけではありません。思いついたらすぐに言う必要はなく、あなたが一番言いたい時に相手に伝えるのがベストです。褒め言葉に限らず、感謝や謝罪の言葉もそうですが、時間が経っているからこそ、相手の深いところに伝わることも多々あります。

 時が熟してから、「あの時のあなたの行動は本当に立派でした」「あの時の一言のおかげで、本当に救われた。ありがとう」「あの時は、本当に申し訳なかった。ずっと謝りたかったんだ」と言われたらどんな気持ちになるでしょうか。それは、数日後かもしれませんし数カ月後かもしれません。

 たったそれだけで相手との関係性が深まると思いませんか?

 プラスのストロークを積極的に投げかけるのも、コミュニケーションにおいて必要なプロセスだと思います。ただ、真の信頼関係を築きたいのなら、本質的な褒め言葉が出てくるまで相手を深く見つめるようにしてみてください。

 人と接したり集ったりすることが難しい日々がつづいて、対面で接した時の感覚が鈍っている今こそ、これまでの習慣を見直して、きちんと伝わり、あたたかみのある関係を築くコミュニケーションをはじめていくことが、折れない心を育てることにつながります。