■経営会議をメンバーが「実況」実況スレが組織を強くする

 少し解説しよう。「スレッド」とはオンライン上にある「議論の場」のようなもの。同社ではグループウェア上に誰でもスレッドを立ち上げることができる。2ちゃんねるは膨大なスレッドで構成されているが、同社のグループウェアにも同じような場がある。

 さて、青野さんが言う「実況スレ」とは、主に会議の実況中継を行うスレッド。会議が始まると、どこからともなく「実況スレ」が立ち上がる。同じ会議を視聴しているメンバーが集まり、その内容や感想などを書き込んでいくスタイルだ。ちなみに同社の会議は大半が録画もされており、リアルタイムで視聴できなかった人も、アーカイブから閲覧できる。同様に「実況スレ」もアーカイブ化されるため、たとえ5年後に入社した社員も、当時の空気を読みとることができるという。

「公式の議事録だと、決定事項はわかるものの、議論の過程や空気感が見えづらい。スレッドを合わせることで、それが伝わりやすくなります」

 さて、ここまで読んで、サイボウズの会議を「未来すぎる」とお感じの方へ。いやいや、オンライン会議だけで、新しいものも人間関係も生まれないでしょ、と。青野さんにぶつけてみました。

「組織に大切なもので、オンラインに発生しづらいもののひとつが“雑音”です。リアルなオフィスなら、自分に関係ない会話が聞こえてきて、それが組織風土をつくったり、新しいものを生んだりしますが、オンラインにはそれがない。僕たちは、そんな“雑音”も、オンラインで表現しようと考えました」

 先ほどの「スレッド」がそれだ。スレッドは、会議の実況だけでなく、新商品に関することや広報に関することなど、どんなことでも立ち上げていい。スレッドには、誰が意見してもOK。「横からすみません」「たまたま見えてしまったのですが」と少し恐縮しながらも、議論のなかに入り、意見を言う。たとえ別の部署であっても、意見は全て受け入れるのがサイボウズ流だ。

 スレッドはデータベースとして、グループウェア上に残る。オンラインに残った議論の地層が、組織の力につながっているのだ。(文:カスタム出版部)