コロナ禍で、会議の場は、会議室からオンラインに代わりつつある。しかし、同じ会議をオンラインに移行するだけでは、そのメリットを享受できない。働き方や組織のあり方を考えるサイボウズの青野慶久社長に、新時代の会議の形を聞いた。
■オンラインに密室をつくらない
以前から、自身が参加する会議について、社員は基本だれでもオンラインで参加できるようにしていた、という青野さん。1日7~8本もあるという会議は、コロナ禍で、自身も含め完全に「オンライン化」した。
多くの会社もいま、同じようにオンライン会議を導入しているだろう。ただサイボウズの会議は、オンラインの良さを存分に生かし、それを組織の力に変えている。
まず、会議が「密室」ではない。いや、そもそもオンラインに部屋はないのだが、多くのオンライン会議は、リアル会議と同じく限られたメンバーしか参加していない。これでは、昭和から続く密室会議と変わらない。
サイボウズでは、なんと会議を「視聴」できる。オンライン会議の場合、ツールにもよるが、多くの人が視聴できるようになる。同社はこのメリットを生かし、たとえ2人しか参加しない会議であっても、社のメンバーに公開しているという。メンバーは、あたかもYouTubeでトークライブを見るように、会議を「視聴」する。
たとえば本部長クラスが参加する「本部長会議」。出席が決まっている参加者は10人程度だが、一部の機密情報や個人情報を扱わない限り、だれでも視聴が可能だ。ときには70人以上のメンバーが視聴することも。事前にアジェンダが共有されるため、興味のある人が見にくる仕組みだ。
ほかにも、事業の戦略を考える「事業戦略会議」や、部下と毎週行っている「1ON1ミーティング(対面ミーティング)」も、機密情報や個人情報を扱わない限りはすべて視聴OK。青野さんは会議をこう捉えている。
「ラジオの公開中継のようなものです」
■オンライン&オープンな議論がフラットな組織をつくる
なぜ、こんな考えに行き着いたのか。そもそも青野さんは、会議には組織のあり方が反映されると考えていた。ヒエラルキー型の組織であれば、会議でもトップの発言が中心になる。一方、同社が理想とする組織は「フラット型」。会議は、それぞれの専門をもつメンバーが集まって議論する場と捉えており、メンバー間に序列はない。
その思想が、オンライン上でうまく表現できた。リアル会議の場合、会議室にいないと意見すら言えないし、ときに「こそこそ話」や「空気を読む」なんて手法で結論が導かれることもある。だが、オンラインならどこにいても意見できるし、誰の意見であっても「一意見」と捉えられる。役職者が有利になりづらく、また地方で働く人が不利になることもない。
加えて青野さんは、フラットな組織をつくるには、クローズなやりとりを減らすことだと考えている。だから、会議も視聴してもらうことで、よりオープンな風土になると考えている。同社の組織力は、「密室での根回し」ではなくオープンな議論によって育まれているのだ。
その風土を、より加速させているものがあるという。
「実況スレッド、通称 ”実況スレ” です」