経営メンバーの会議の様子。経営メンバー以外も、視聴が可能。グループウェア上では「実況スレ」が立ち上がることもあり、多くのメンバーが意見や感想を発している。
経営メンバーの会議の様子。経営メンバー以外も、視聴が可能。グループウェア上では「実況スレ」が立ち上がることもあり、多くのメンバーが意見や感想を発している。

青野慶久(サイボウズ代表取締役社長)1971年生まれ。大阪大学卒業後、松下電工(現 パナソニック)を経て、97年にサイボウズを設立。離職率を6分の1に低減した実績や、ビジネスのクラウドシフトの他、育ボス、妻氏婚(つまうじこん)、夫婦別姓などの講演も多数。内閣府、文科省の外部アドバイザーなどを歴任。(写真提供:サイボウズ、以下同)
青野慶久(サイボウズ代表取締役社長)1971年生まれ。大阪大学卒業後、松下電工(現 パナソニック)を経て、97年にサイボウズを設立。離職率を6分の1に低減した実績や、ビジネスのクラウドシフトの他、育ボス、妻氏婚(つまうじこん)、夫婦別姓などの講演も多数。内閣府、文科省の外部アドバイザーなどを歴任。(写真提供:サイボウズ、以下同)

商品開発メンバーと1対1でランチミーティングをしたときは、わずか2人での打ち合わせながら、約30人がライブで視聴していた。
商品開発メンバーと1対1でランチミーティングをしたときは、わずか2人での打ち合わせながら、約30人がライブで視聴していた。

 コロナ禍で、会議の場は、会議室からオンラインに代わりつつある。しかし、同じ会議をオンラインに移行するだけでは、そのメリットを享受できない。働き方や組織のあり方を考えるサイボウズの青野慶久社長に、新時代の会議の形を聞いた。

【写真】「実況スレ」には視聴したメンバーのコメントが連なる

■オンラインに密室をつくらない

 以前から、自身が参加する会議について、社員は基本だれでもオンラインで参加できるようにしていた、という青野さん。1日7~8本もあるという会議は、コロナ禍で、自身も含め完全に「オンライン化」した。

 多くの会社もいま、同じようにオンライン会議を導入しているだろう。ただサイボウズの会議は、オンラインの良さを存分に生かし、それを組織の力に変えている。

 まず、会議が「密室」ではない。いや、そもそもオンラインに部屋はないのだが、多くのオンライン会議は、リアル会議と同じく限られたメンバーしか参加していない。これでは、昭和から続く密室会議と変わらない。

 サイボウズでは、なんと会議を「視聴」できる。オンライン会議の場合、ツールにもよるが、多くの人が視聴できるようになる。同社はこのメリットを生かし、たとえ2人しか参加しない会議であっても、社のメンバーに公開しているという。メンバーは、あたかもYouTubeでトークライブを見るように、会議を「視聴」する。

 たとえば本部長クラスが参加する「本部長会議」。出席が決まっている参加者は10人程度だが、一部の機密情報や個人情報を扱わない限り、だれでも視聴が可能だ。ときには70人以上のメンバーが視聴することも。事前にアジェンダが共有されるため、興味のある人が見にくる仕組みだ。

 ほかにも、事業の戦略を考える「事業戦略会議」や、部下と毎週行っている「1ON1ミーティング(対面ミーティング)」も、機密情報や個人情報を扱わない限りはすべて視聴OK。青野さんは会議をこう捉えている。

「ラジオの公開中継のようなものです」

■オンライン&オープンな議論がフラットな組織をつくる

 なぜ、こんな考えに行き着いたのか。そもそも青野さんは、会議には組織のあり方が反映されると考えていた。ヒエラルキー型の組織であれば、会議でもトップの発言が中心になる。一方、同社が理想とする組織は「フラット型」。会議は、それぞれの専門をもつメンバーが集まって議論する場と捉えており、メンバー間に序列はない。

 その思想が、オンライン上でうまく表現できた。リアル会議の場合、会議室にいないと意見すら言えないし、ときに「こそこそ話」や「空気を読む」なんて手法で結論が導かれることもある。だが、オンラインならどこにいても意見できるし、誰の意見であっても「一意見」と捉えられる。役職者が有利になりづらく、また地方で働く人が不利になることもない。

 加えて青野さんは、フラットな組織をつくるには、クローズなやりとりを減らすことだと考えている。だから、会議も視聴してもらうことで、よりオープンな風土になると考えている。同社の組織力は、「密室での根回し」ではなくオープンな議論によって育まれているのだ。

 その風土を、より加速させているものがあるという。

「実況スレッド、通称 ”実況スレ” です」

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