17年と18年にトップを争っていた菅野と則本が揃って19年に故障で調子を落としてランクを大きく下げた。長年阪神の先発投手陣を支えてきたメッセンジャーも19年で引退。上位の常連だった菊池と19年トップの山口もメジャーに移籍しており、なかなかナンバーワンが見えにくい状況となっている。菅野と則本も余力はあるものの、年齢を考えると一昨年までのような高水準をキープすることは難しいだろう。

 そんな中でトップを一人挙げるとなるとやはり千賀になるだろう。18年は故障もあってWARでは25位という結果に終わったが、19年は見事な復活を見せた。特長はその奪三振の多さ。先発に転向した16年から4年連続でイニング数を上回る奪三振数をマークしており、昨年は両リーグで唯一200を超える227奪三振で最多奪三振のタイトルも獲得した。

 セ・リーグトップの山口が188奪三振で、パ・リーグ2位の有原が161奪三振という数字を見ても、千賀の三振を奪う力が頭一つ抜けていることがよく分かるだろう。課題を挙げるとすれば被本塁打数の多さだ。過去3年間の数字は15本、21本、19本で推移しており、このあたりが改善されてくれば、更にWARも向上するだろう。

 千賀の対抗馬として有力なのが山本だ。味方の守備が関与しない、投手の責任による失点率を表すtRAという指標においては、WARトップの山口と千賀を上回る数字をマークしている。tRAは奪三振以外では内野フライ、ゴロ、外野フライ、ライナーの順で数値が高く出る計算となっているが、それだけ山本が打者にしっかりとらえられた打球や、外野まで飛ばされた打球が少なかったことをよく示していると言えるだろう。

 昨年は規定投球回ちょうどの143回だったが、ピッチングの質を落とすことなく、更に長いイニングを投げることができるようになれば、千賀に近づくことも十分に考えられる。今年で22歳という若さを考えても、まだまだ成長が期待できるだろう。

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安定した活躍が難しい投手たち